いい人でなければ、死んでもいいの?→看護教師の「夢のない答え」が的確すぎて、ぐうの音も出ない〈風、薫る第47回〉

7分間の長い長いアバン

 トメは彼女の一番上の兄を看取った経験があった。そのときの悔しさから看護婦を目指した。

 リンゴを配ったり、東京見物したがったり、素朴さを振りまいていたトメだが、悲しい体験をしていたのだ。ここでトメは泣く。

 ほんとはトメだって泣きたいのだ。

 兄が死んだとき、トメはずっと泣いていたし、母はいまでも泣いている。だから、小野田の死を悲しみ、何もできなくなっているゆきを「看護婦としては駄目かもしれねえが、おらは好きだ」とトメは言う。

 悲しみを知っている人は、他者にやさしい。

「看護の仕事は、いえ、医療の仕事に就く人は、人を助けたいと願い、勉強や訓練を重ねるのに、これから先、助けられない瞬間はもっと訪れます」

「この実習で生まれた課題に、あなたなりの答えを出してください」

 バーンズ先生はゆきにそう言って、特別授業は終わった。ここまで7分間のアバン(タイトルバックの前の序章のようなもの)。つまり、1話15分の半分。

 主題歌がなかなかはじまらない分、トメが「風はただ知っている」の代わりに「私はただ知っている」と言ったのかも。せっかく真面目ないいシーンを茶化してすみません。

 トメの話を聞いた多江(生田絵梨花)は、皆とは志が違うなどと言っていた自分を恥じる。ここで、そんな多江を演じている生田絵梨花さんのコメントを紹介しよう。

 多江は江戸時代には奥医師をしていた家に生まれ、身近に医療がある環境で育つ。優等生気質で意識が高い。

○役どころについて
「多江は医者の家系で育ち医療に対する情熱や一生懸命さがゆえに、優等生で強い圧を発する言動をしてしまい、入学当初は直美とバチバチで……。『自分は医者になれない』という劣等感を隠すための気の強さなのではないかと想像しています。多江がきついだけの性格に見えてしまわないように気をつけて演じていたら、ある日、喜代役の菊池亜希子さんが『多江自身が多江でいようとがんばっている感じがあふれちゃって、かわいいよね』と言ってくださって、その言葉にとても安心しました。視聴者の皆さんにも多江のあふれ出てしまう余白を受け取ってもらえたらうれしいです」

○看護婦という職業について
「当時、あまり理解されていなかった看護の仕事に対する待遇などを知れば知るほど、自分たちが演じる看護婦養成所の一期生がこの職業を確立するためにがんばっていかなきゃいけないという覚悟が芽生えました。この時代に看護を志した方々へのリスペクトの気持ちがどんどん大きくなっています」