対外資産の「質」を見る
対外純資産が多い国が、必ずしも豊かなリターンを享受しているわけではない。問われるべきは、資産の「量」ではなく「質」である。つまり、リターンが大きい対外資産に効率よく振り分けられているかどうかが重要である。
日本の対外資産は、海外直接投資、海外証券投資、海外子会社の持ち分、債券、株式などで厚く構成されている。トヨタ、ソニー、三菱UFJなど、日本企業が世界各地に築き上げてきた事業体は、毎年、膨大な利子や配当、再投資収益を日本に送り返している。
そのため、日本はエネルギー高騰などで貿易収支が赤字に陥る年があっても、第一次所得収支では依然として巨大な黒字を維持し続けている。
それに対して、中国の対外資産には外貨準備や預金などの安全資産の比重が比較的高い。2025年時点でも、中国の外貨準備は世界最大規模を維持しており、人民元の安定維持や資本流出への備えという役割を担っている。
このように、中国が貿易によって獲得した外貨の相当部分は、直ちに高収益を追求する投資へ回るというよりも、まず国家の管理下で流動性や安定性を重視した形で蓄積される傾向が強い。
また、中国の対外資産の構成を見ると、直接投資は一定の比率を占めるものの、全体に占める割合はおおむね3割程度にとどまっている。残りは外貨準備に加え、預金や債券など比較的リスクの低い資産が多くを占めている。この構造は、資産全体としての安全性や為替防衛能力を高める一方で、高い投資収益を継続的に生み出すという点では制約にもなりうる。
すなわち、中国は巨額の対外純資産を有しているにもかかわらず、その多くが「守る資産」として運用される傾向が強く、日本のように海外直接投資や証券投資を通じて継続的に収益を回収する構造とは性格を異にしている。この違いが、対外純資産の規模では接近しても、第一次所得収支の面では大きな差となって現れていると考えられる。







