株式売買代金の7割は海外投資家
円安で日本株が割安、輸出企業の利益も膨らむ
日経平均株価が下落せず上昇を続ける要因として、実は円安が関係している面がある。
最近の株式市場での取引では海外投資家の売買代金は、全体の7割近くを占めたといわれる。
円安にもかかわらず、海外からの投資が増える理由は何だろうか?また、海外からの投資が増えるのに円高にならない理由は何だろうか?
まず、円安なのに対日投資が増える理由として、円安は日本株をドル建てで割安に見せること、輸出企業や海外売上比率の高い企業の円建て利益を押し上げることなどが挙げられる。このため、むしろ日本株買いの材料になり得るのだ。
一方で海外投資家は、為替リスクを避けるため、株式を買うのと同時に円売りの為替ヘッジを行うことが多い。この場合、株買いと同時に円売りが発生する。したがって、株式購入に伴う円買い圧力は、ヘッジによる円売り圧力で相殺される。
しかも、日本の長期金利は上昇しているが、アメリカなどと比べれば、円金利は低い。このため円を借りて、より高金利の通貨・資産に投資する「円キャリー取引」が残りやすい。したがって日本株買いがあっても、同時に円売り・ドル買いの流れが続けば、円高にはならない。
また、さらに、為替市場全体は株式市場よりはるかに大きく、エネルギー輸入に伴うドル需要や日米金利差による円売り圧力も強い。このため、海外勢の日本株買いが増えても、円高ではなく円安が進むことがあるのだ。
日銀が利上げを見送ったことも影響
ガソリン代補助継続するなら利上げ必要
また、最初に見たイギリスとアメリカの場合との違いは、株式市場の動向だけではない。中央銀行のリアクションも異なるものだった。
イギリスの場合もアメリカの場合も、中央銀行は当時、金利高騰に対して引き締め政策を堅持した。ところが日本では、いま、長期金利の上昇が顕著であるにもかかわらず、日本銀行は4月の金融政策決定会合で利上げを行わなかった。したがって円安基調も続いている。
日銀は利上げを見送った理由として、ホルムズ海峡封鎖による原油価格高止まりの物価や景気への影響を見極める必要があるからとした。
しかしこれは奇妙な理由だ。原油価格の高騰によって物価上昇率が高まることはほぼ明らかなのだから、予防的な金利引き上げが行われるべきだった。
物価高対策で行っているガソリン代の補助を政治的な理由でやめることができないのであれば、せめて日銀が金利を引き上げるべきだった。
こうしたことも株価に「債券自警団」の動きが影響しない原因になっている。
(一橋大学名誉教授 野口悠紀雄)







