「親の口座から葬式代」――。特集『やってはいけない!相続&生前贈与』(全16回)の#11では、うかつに手を付けると損をしてしまう、専門家への相談が多い税務署対策を巡る二大トラブルの事例と解決法をお届けする(ダイヤモンド編集部 野村聖子、監修/税理士法人弓家田・富山事務所代表社員 弓家田良彦)
事例1
親の死亡直前に親の口座から葬式代を引き出した
「俺の口座から葬式代を引き出しておいてほしい」。坂元美恵さん(仮名・50代女性)は、がんで入院中の80代の父からそう頼まれた。父は複数の不動産や預貯金、金融商品など計約3億円の財産があり、死後に税務調査が入る可能性が高い。
そこで、いよいよ自分の死期を悟った父は、自分が死ぬ前に葬式代として500万円を引き出しておくよう、娘の美恵さんに頼んだのである。
美恵さんはその500万円を自宅に保管し、父の言い付け通り葬式代に充てた。また「死亡時には口座から引き出されているのだから、遺産には含まれない」と父から説明を受けていたため、相続税の申告をする際にも、この500万円はもちろん計上しなかった。
しかし、父の死から2年後の税務調査で、この500万円を計上しなかったとして仮装・隠蔽を疑われた。故意ではないと説明し、重加算税は免れたが、過少申告加算税として新たな相続税に10%を加算して支払う羽目になった。
次ページでは、「親の口座から葬式代」が追徴課税になってしまった理由をはじめ、やってはいけない税務署対策2事例について専門家が解説する。