しかし、極度で急性の睡眠不足と体重増加との間には関連性があるようだが、睡眠不足が数週間続く程度で、軽度なら関連性は小さい。実生活ではこちらが当てはまる場合が多い。

 睡眠不足や不眠症と、心血管疾患のもう一つの危険因子、高血圧との関係はどうだろう?睡眠不足で就寝時刻が通常より大幅に遅い場合、心拍数の上昇や高血圧のリスクがある。ただ、各種の研究結果の間には相違が見られる。不眠症患者には血圧の上昇と正常な血圧下降の鈍化がみられる。

 2021年の中国の研究チームによるメタ分析では、早朝の覚醒と睡眠維持の問題は、特にヨーロッパでは高血圧のリスクの増加と関連しているが、アジアやアメリカでは有意ではなかった。この潜在的な理由はいまだに不明瞭だ。

 調査の限界として認識しておくべきなのは、いくつかの研究では身体疾患や精神的な健康状態、使用されている可能性がある薬剤を調べておらず、個々の喫煙状況や社会経済的な状況も考慮に入れていないことだ。このため、高血圧の発症リスクの増加が不眠症によるのか、他の要因なのかを結論づけるのは難しい。

不眠症の糖尿病患者は
高齢、肥満、貧困傾向にあり

 糖尿病はインスリン分泌やインスリン活性、またはその両方に欠陥があり、複数の臓器に損傷を与えて心血管疾患を発症するリスクを高める疾病である。糖尿病と睡眠との関係はどうだろう?

 睡眠の状態が平均的な被験者を睡眠不足の状態にする実験をしたところ、糖尿病の初期指標の一つであるインスリン感受性が低下することがわかった。

 一方、睡眠問題がある場合、糖尿病初期指標との関連性には相反した研究結果がある。

 睡眠問題の客観的・主観的な測定結果と糖尿病の関連性を調べる研究では、睡眠が5時間未満で不眠症の訴えがある場合、2型糖尿病の発症リスクは300%高くなることがわかった。不眠症のみ、あるいは睡眠不足のみでは高リスクとの関連はなかった。2つの要素が組み合わされてはじめて関連性が見られたのだ。理由として考えられるものはなんだろう?

 不眠症と客観的な睡眠時間に関する研究によれば、睡眠時間が短い人は、より高齢、肥満で、社会的貧困スコアが高い傾向があり、神経精神疾患があることが多い。こうした要因それぞれが糖尿病の発症率の高さと結びつくものであり、客観的な睡眠時間の短い不眠症と糖尿病の関係を説明するものかもしれない。