6件のランダム化比較試験(被験者をランダムに治療群と対照群に分けて効果を測定する手法)のレビューでは、マインドフルネスや瞑想が不眠症の症状を適度に軽減することがわかった。夜の覚醒時間の短縮と主観的な睡眠の質の向上が見られたのだ。残念ながら各研究の被験者は数が限られていた。

 瞑想とマインドフルネス認知療法の両方の研究を対象としたこのレビューでは、マインドフルネスストレス低減療法と不眠症に対するマインドフルネス認知療法を施した後に主観的な睡眠の質が改善すると結論づけられた。

 こうした治療法の一部では、心理面に配慮しながら正しい知識や情報を伝える心理教育が睡眠圧や体内時計といった基本原理の知識の向上につながり、それ自体に不眠症の症状によい効果をもたらす可能性があることは注目に値する。

快眠にはネガティブ思考も
ポジティブ思考も避けるべき

 ここで、睡眠をサポートする可能性のあるマインドフルネスエクササイズの一例を説明しよう。

 何かを考えないようにしたことはあるだろうか?目を閉じ、ピンクのキリンを1分間、考えないようにしてみよう。すると、簡単ではないとわかるはずだ!頭から追いだそうとすればするほど、むしろますます自然に浮かんでくるように思えるだろう。

 特にこれから眠ろうという時だったりすれば、なんとも迷惑なことだろう。さらにうっとうしいのは、ベッドにもぐりこんで眠ろうとしても、そこには気をそらすようなものはほとんどない。考えたくない思考はますます大きく膨らむばかりだ。

 ネガティブ思考や、ポジティブでも脳を興奮させる思考がくり返される場合、先の例とは少し違う視覚化エクササイズをするといいかもしれない。エクササイズの目標は思考を除去することではない。できっこないからだ。目標は頭を占める思考に別の姿勢で向きあい、少し距離を置くことだ。心が平和になるかもしれないので試してみてほしい。

心地よい眠りを得るために
おすすめのエクササイズ

 森の中にぽっかり空いた草地にいると想像してみよう。木々の葉が風にそよぐ音が聞こえる。周囲は寒いが、焚き火が暖かく心地よい。一人で、あるいは一緒にいて心地よいと思う誰かと、または数人とでもいい、とにかくそこで横になっていると想像しよう。

 もう一度、その場所をできるだけ細かく想像しよう。自分は安全に横たわっている。なじみのある場所だ。木が燃えるにおいがしたり、パチパチと音を立てるのが聞こえるかもしれない。火は捕食者を寄せつけない。この状況を心にとめておこう。エクササイズ中に気持ちの動揺を感じるかもしれないが、気にしなくていい。そうなった時には毎回、森のその場所に立ちもどるようにしよう。

『熟睡力』書影熟睡力』(メライン・ファンデラール著、國森由美子訳、新潮社)

 さて次に、横たわっている場所の周囲に1匹または数匹の動物がいると想像しよう。焚き火があるので安全な距離がある。動物はそれぞれがある思考を代表している。自分が心地よく感じる動物はポジティブな思考である。ネガティブな思考はあまりよい印象を持っていない動物、あるいは危険な動物である。虎でもライオンでもよい。火のそばは安全なのでなんの問題もない。

 動物の特徴を観察してみよう。外見、毛並み、鳴き声など。思考を様々にめぐらせ、つまりそれに合った動物を視覚化していくわけだ。新たな思考に移るまで、そこにいるのはその思考を代表する動物である。どれだけ長く続けても構わない。動物(つまり思考)を近くでじっくり見る時間はいくらでもある。

 このエクササイズを通して、自分の思考を受け入れるとともに、距離を置くことが学べる。思考は脳が創りだす物語やイメージだ。このエクササイズを行うとそんな虚構の作り事の影響は薄れる。ある出来事について考えることは、実際に経験するのと同じ影響をもたらすことがある。そうした様々な思考を普段とはちがう方法で処理すると心が静まり、夜の睡眠にもいい影響を及ぼすかもしれない。