この研究は、米国の大手スーパーマーケットにおける実際の購買履歴を用い、プログラム導入前後の変動を長期的に検証した実証分析を行っていて、アンケート回答に基づく主観的な調査とは一線を画す高い客観性と信頼性を持っている。

 論文では、ロイヤルティプログラム(お店による囲い込みの仕組み)は普及率が高く、購買頻度の高いカテゴリにおいて極めて効果的に機能し、売上と利益の増加をもたらすと論じられている 。対照的に、普及率や購買頻度が低く、衝動買いや買いだめが起きやすいカテゴリではロイヤルティプログラムの効果が弱まる傾向が示された 。

 日常的に繰り返し買われる飲料類は、まさに「囲い込み」による顧客の無意識の帰属意識が売上に直結するジャンルである。

特に買うものは何もないけれど、店の前を通ると寄ってしまう

 冒頭に触れた書籍の中で、鈴木敏文氏は消費者の無意識の行動原理を次のように表現している。

《昼休みになって、特に意識せずにセブン-イレブンに足が向き、店頭で新商品を見て、瞬間的に『食べてみよう』『おいしいに違いない』と直感して手を伸ばすのも、ロイヤルティがベースにあるからです》

《特に買うものは何もないけれど、セブン-イレブンの前を通ると寄ってしまう。コカ・コーラの販売量が日本一多いのも、このロイヤルティによるものでしょう》

《いつも利用するセブン-イレブンのお店で買い物をするコト(体験)自体に満足すると同時に、店舗の売り上げに貢献したことにも満足する》

 消費者は単に飲み物を求めているのではない。日常の中にある安心感や、特定の空間で買い物を終える心地よさに対してお金を払っている。

 私は、かつて経済誌の編集現場に身を置いていた。そんな私の目から見ても、鈴木氏が大活躍していた10年前のセブン-イレブンには間違いなく消費者を惹きつける圧倒的な魅力が存在した。

 棚の陳列は毎日のように新しくなり、新製品は絶妙な配置で来店者の視覚に飛び込んできた。明確な購入目的を持っていなくても、少し空き時間ができれば無意識のうちに自動ドアをくぐってしまう魔力を持っていた。新たな発見への期待感が常に店舗空間を包み込んでおり、訪れるたびにささやかな驚きを提供してくれた。

 しかし、現在のセブン-イレブンはどうだろう。