家族によると、父親は約24年前から米国に滞在し、屋根工事の仕事に従事しながら税金も納め、3人の娘を大学まで通わせた。

「善良な市民として生きてきたのに、この仕打ちはひどすぎる」と長女ジャネットさん(23)は憤る。父親には前科もなかったと強調し、「トランプ大統領は犯罪者だけを対象にすると言っていた。父は無実なのに逮捕された」と訴えた。

 ジャネットさんは逮捕の様子を動画配信し、短時間で数百万回再生され大きな反響を呼んだ。その後、家族はクラウドファンディングで支援を募り、近隣住民やボランティアの支援を受けているという。

 ジャネットさんは米国に生まれ、市民権を持つが、母親のサンワナさん(50)は夫と同じメキシコ出身の不法移民だ。夫婦で清掃や屋根修理など複数の仕事を掛け持ちしながら、家族を支えてきた。オバマ政権時にも強制送還はあったが、「あの頃はこんな暴力的なやり方はなかった」と語る。

 トランプ政権になってからは恐ろしくて外出もできなくなり、「これではメキシコの麻薬カルテルに襲われるのと同じ。安全なはずの家で心臓が止まりそうになる」と悲痛な心境を吐露した。2人の娘は大学に通っているが、生活費が払えなくなれば学業をあきらめざるを得ない。サンワナさんは「夫なしでは生きていけない」と涙ながらに語った。

「我々は動物じゃない」
シカゴで広がる怒り

 ミシガン湖畔に高層ビルが立ち並ぶシカゴ中心部から車で西に約1時間離れた住宅街の一角に、移民・関税執行局(ICE)の収容施設がある。覆面姿の捜査官に次々と拘束された不法移民らが送り込まれるのが、この施設だ。

 シカゴでは2025年9月から、「ミッドウェー・ブリッツ作戦」と称する摘発作戦が始まった。国境警備隊員までもが動員され、ブラックホークヘリコプターからのロープ降下やドアの破壊など、軍事作戦のような大規模な家宅捜索が行われた。

 近郊ではこの作戦で、メキシコ出身の男性がICE捜査官の取り締まりに抵抗し、射殺される事件が起きた。抗議デモには容赦なくゴム弾や催涙ガスが使用され、街は緊迫した。