カレン・ディアスさん(31)の父親はエルサルバドル出身の不法移民だ。数日前、父親の職場に突然ICEの捜査官が現れ、間一髪で拘束を逃れたといい、「私は父が仕事に行くのにも恐怖を感じている」と語った。

 両親がグアテマラ出身という男性(41)は、7歳の娘を連れて集会に参加した。「娘は街に軍隊がいる理由が理解できない。トランプ政権がやっていることは暴力の扇動だ」と怒りをぶちまけた。

 この日、デモ隊は会場の外でも「ICEは出ていけ」とシュプレヒコールを上げながら行進し、ICEが属する国土安全保障省の庁舎前に立ち並ぶ州兵とにらみ合いを続けた。建物の外壁にはトランプ氏やICEを罵る落書きも目立ち、普段は静かな官庁街に張り詰めた空気が漂った。

ドジャースファンにも
広がった怒り

 民主党のカレン・バス市長は6月9日の記者会見で、「ロサンゼルスでは摘発作戦を正当化するような出来事は起きていない。連邦政府が介入し、地方の権限を奪うとどうなるか。ロサンゼルスはその実験場になったかのようだ」とトランプ政権を強く批判した。

『強権国家アメリカ「トランプ革命」の衝撃』書影強権国家アメリカ「トランプ革命」の衝撃』(読売新聞アメリカ総局、中央公論新社)

 大規模な抗議デモは約1週間で収束したが、トランプ政権はその後も「連邦政府の職員や財産を保護するため」として州兵をロサンゼルスにとどまらせ、ICEは移民が集まる場所に狙いを定めて摘発作戦を展開した。6月19日には、ICEの捜査官が米大リーグ・ドジャースの本拠地ドジャースタジアムに立ち入り許可を求めた。

 球団はX(旧ツイッター)に「(ICEの)敷地内への立ち入りは拒否された。本日の試合は予定通り開催される」と投稿した。国土安全保障省は摘発目的を否定したが、ドジャースファンの4割以上を占めるとされる中南米系の住民の間で動揺が広がり、この日の試合前には、スタジアムの外で抗議活動が再燃した。

 地元紙ロサンゼルス・タイムズによると、ICEと税関・国境取締局(CBP)は6月上旬からの約1カ月で、ロサンゼルスとその周辺地域で不法移民を2800人近く逮捕した。