中南米出身者を中心に憤慨する市民は多い。

 10月、シカゴ中心部でトランプ氏に反発する500人以上の参加者が集まり、「我々は動物ではなく人だ」「州兵はホワイトハウスに送れ」といったプラカードや横断幕を掲げ、市内にそびえるトランプタワーまで行進した。ICE施設の正門付近を訪れると、数十人の市民らがフェンスの前に直立し、怒声を浴びせていた。門の先に目をやると、覆面姿の捜査官が屋上から双眼鏡やカメラを使ってこちらを監視している姿が見えた。

 抗議のために訪れる市民の中には、聖書の一節を朗読し、涙を流しながら祈りをささげる人たちもいた。中南米出身の女性は「トランプ政権による移民の取り締まりは、ヒスパニック住民を集中的に狙っていて、もはや人種差別だ。移民の家族は引き裂かれ、罪のない人々の暮らしを破壊することにつながってしまう」と非難した。

 シカゴは19世紀以来、典型的な移民都市として繁栄してきた。ドイツ、ポーランド、アイルランド、イタリア、リトアニア、メキシコなどの移民が流入し、街の産業や文化を築いてきた。

 20世紀に入ると、南米やアジア系の移民が経済を支えた。それゆえ、シカゴは移民に優しい。「歓迎都市条例」を設け、許可を得ていない不法移民であっても居住していれば、教育や医療のサービスを受けられる。

われわれも移民だが
新参の移民とは違う

 しかし、こうした政策は不法移民がシカゴに流入する一因にもなっており、治安悪化や社会福祉の負担増に強い不満を寄せる住民も多い。

 シカゴで不動産業を営むヘレン・リウさん(61)は「新参の移民が容易に福祉を受けられるのは不公平だ」と話す。リウさんは2023年に母を中国からシカゴに移住させたが、母は短期間で永住権を取得し、公的医療保険にも加入できた。このことからかえって、移民をためらうことなく受け入れるシカゴ市政に疑問を持つようになった。

「仕事もなく食料や住居を必要とする移民もおり、社会的な負担は重くなるばかりで、民主党が強いシカゴ市に任せてはいられない。不法移民や犯罪に何らかの対策は必要で、州兵の派遣は理解できる」と語り、トランプ政権の方針を支持している。