当時は特急・超特急は文字通り「特別」な急行列車であり、富裕層が優先的に乗るものという意識が強かったからだ。

 これを変えたのが、70年の大阪万博、そして国鉄による「ディスカバー・ジャパン」キャンペーンだ。国内旅行需要が飛躍的に上昇し、東海道新幹線は16両編成という超大編成と高速性能を活かして輸送力向上に大きく貢献。新幹線は広く国民の移動手段として定着した。

 その後、新横浜駅など沿線が発展し、90年代以降は「のぞみ」が登場してスピードアップ。今では年間約1億6800万人もの人を運ぶ「高速・大量・長距離」移動手段の地位を確立している。

 このように、ただ速く移動するためではなく、(1)混雑している区間に新たな路線を設けて供給を改善、(2)さらなる移動需要を生み出す、ことが新幹線をはじめとする高速鉄道の意義といえるだろう。

「インドネシアは日本の新幹線を選ぶべきだった」と言う人が知らない、中国高速鉄道が東南アジアで苦戦する本当の理由日本が世界に誇る東海道新幹線、その凄みとは? Photo:Paul Almasy /gettyimages
「インドネシアは日本の新幹線を選ぶべきだった」と言う人が知らない、中国高速鉄道が東南アジアで苦戦する本当の理由新幹線は今や訪日外国人観光客(インバウンド)にも人気だ Photo:NurPhoto/gettyimages

 では、東海道新幹線が作り出したような高速・大量・長距離の輸送需要とその受け皿は、東南アジアでは皆無なのか? 結論から言うと、そんなことはない。すでに別のものが定着している。

東南アジアはLCCが先に発展
中国や日本と最大の違い

 それはLCC(ローコストキャリア、格安航空)である。1995年を転機に、東南アジアでは各国で航空自由化が進み、エアアジア、ベトジェット、ライオンエア、セブパシフィック航空など数々のLCCが誕生。それまで経済的な理由から飛行機に乗れなかった人を中心に、多くの人が、数百キロを超える移動を行えるようになった。

 今や東南アジアの航空業界では、座席供給量ランキングで上位9社中、6社がLCCだ。さらに今後もLCC市場は年率約4.8%(2030年まで見込み)の成長が予想されており、大手の業績が伸びると見込まれている。