少し専門的になるがお伝えしたいのが、日本の新幹線は全ての列車が独立した線路を走行する形式だ。山岳が続くうえに大量の都市間輸送が必要な、日本の国情に特化している。そのため、他国では台湾などごく一部を除き、過剰な設備になりがちだ。
この、「過剰になりがち」問題は新幹線だけでなく、日本の国際協力における問題点のひとつとして指摘されている。「現地化」しないと、結局はうまくいかない。
つまりインドネシア高速鉄道の敗因は、現地の事情を十分に考慮することよりも、中国の高速鉄道に近い乗り方や過剰性能の車両・システムをそのまま移植したことにあるのではないだろうか。
日本勢がアジア高速鉄道で
主導権を握り返す余地があるとしたら…
では、東南アジアの高速鉄道は今後発展するのだろうか?
筆者は、最高時速250~350kmかつ高頻度運転という業態は成立しにくいと考えている。
500km以上の距離の移動は、LCCが定着している。LCC参入前に主要都市間の高速鉄道網が普及した日本や中国、台湾、韓国とは前提が大きく異なる。仮に高速鉄道が計画通りできあがったとしても、価格競争力と速達性、広大なネットワークを持つLCC大手に立ち向かうのは難しいのではないか。
これを理解しているのだろう、マレーシアでは、在来線を改良することで高速にする方針だ。2010年に開業したETSは、首都クアラルンプール~北部のイポー間、約200kmを約2時間30分で結ぶ高速特急列車だ。
マレーシアのレールの軌間は1000mmと、日本の新幹線(1435mm)はおろか、在来線(1067mm)よりも狭い。しかし、複線化や電化などの改良で最高時速145kmを実現した。日本の新幹線を除いて、これより速い列車は京成スカイライナー(最高時速160km)しか存在しない。
200km程度なら、飛行機だと短すぎる距離なので、LCCの脅威はないだろう。日本でいえば、都内から静岡市くらいに相当する。
在来線を改良する形なら、高速鉄道を建設するよりも安い費用で済む。中国の一帯一路構想のように、外債による債務の罠を避けることもできる。
こうした在来線を改良して時速130km~250km程度の運転を目指す手法は、日本では「中速新幹線」と呼ばれる。現在、北海道の札幌~旭川間などで検討されている。
在来線の改良で済む程度なのでスピードアップには限界がある。しかし繰り返すが、東南アジア諸国は、東京~大阪間のような500km超移動はすでにLCCの牙城だ。ここを切り崩そうと考えるほうが無茶だ。
もし、日本勢が東南アジアの鉄道で主導権を握り返すならば、時速150~200km前後で、200~300km程度の距離(東京から名古屋あるいは仙台くらい)を移動する「中速新幹線」のほうが、現実味がありそうだ。
移動インフラは、国家の覇権主義で建設しても意味がない――。中国は、現地事情を考慮せずに自国ベースの交通システムを推し進めて問題点を露呈させた。
日本がもし再び、鉄道の輸出に商機を見いだすなら、現地事情に合わせた整備を進めていくことが求められるといえるだろう。







