2026年5月20日、中国・北京の人民大会堂で開かれた拡大会合後の署名式に出席する中国の習近平国家主席 Photo:SPUTNIK/JIJI
中国主導で2023年10月に開業したジャカルタ―バンドンを結ぶインドネシア高速鉄道(Whoosh)と、2007年から日本の新幹線技術を中核に運行を続ける台湾高速鉄道(THSR、通称・台湾新幹線)は、対照的な軌跡をたどっている。その決定的な違いは日中の根本的な思想の違いにあるという――。(イトモス研究所所長 小倉健一)
インドネシア高速鉄道と
台湾高速鉄道で「明暗」
「高速鉄道建設で、インドネシア政府の予算は一切使いません。借金の保証も求めません」――耳を疑うほど甘い言葉が、2015年にインドネシアへ投げかけられた。中国が高速鉄道計画に持ち込んだ提案である。
それから10年。中国主導で2023年10月に開業したジャカルタ―バンドン高速鉄道(Whoosh)と、2007年から日本の新幹線技術を中核に運行を続ける台湾高速鉄道(THSR、通称・台湾新幹線)は、開業時期こそ16年離れているものの、対照的な軌跡をたどっている。
首都ジャカルタとバンドンを結ぶこの計画は、もともと日本が長い時間をかけて事業化調査を重ねてきたものだった。日本側の提案は、政府の債務保証を前提とした金利0.1%の円借款という極めて低利の条件である。
しかし2015年、中国が土壇場で日本案を覆す提案を持ち込んだ。「インドネシア政府の予算投入も債務保証も一切要らない」という事業対事業(B2B)スキームである。財政赤字の拡大を避けたいジョコ・ウィドド政権にとって、この条件は渡りに船とばかりに映り、中国案が選ばれた。
事業主体としてインドネシア国有企業4社のコンソーシアム(PSBI)が60%、中国企業連合が40%を出資する合弁会社KCICが設立され、資金の約75%は中国国家開発銀行(CDB)からの融資で賄われることとなった。
インドネシア政府は
国家予算の追加投入
ところが「政府は金を出さない」という当初の約束は、工事が始まると次々とほころびていく。用地買収の難航、地質上のトラブル、新型コロナの直撃が重なり、当初60億ドル超とされた建設費は最終的に72.7億ドル(約113兆ルピア)まで膨らんだ。約12億ドルの超過分を補うため、インドネシア政府は結局、国家予算の追加投入を強いられる。
CDBからの当初融資金利は2%だったが、超過分には3.4%が適用され、年間の支払利息だけで約1億2100万ドルという重い負担がのしかかった。需要予測も外れ、1日5万人と見込まれた乗客は実際には1万8000人前後にとどまる。
Whoosh事業に60%を出資するインドネシア側コンソーシアムPSBIは、2024年に4兆1900億ルピアの損失を計上し、2025年上半期にも1兆6200億ルピアの損失を計上した。
PSBIの最大株主であるインドネシア国鉄KAI(出資比率58.53%)が負担した損失は、2024年に2兆2300億ルピアに達し、建設を担ったWIKAは株式取引停止処分まで受けている。
汚職撲滅委員会(KPK)が建設費水増し疑惑の予備調査に動き、プラボウォ政権は2025年に新設のソブリンウェルスファンド「ダナンタラ」を主導役に、中国側との債務再編交渉へ追い込まれた。
ここで台湾高速鉄道に目を移したい。







