24時間対応できるAIに
人間は勝てない?
それでは今回、ChatGPTの回答は「間違って」いたのだろうか。
AIは虐待リスクを軽視しないし、「親から投げ飛ばされた」という相談に対して児相の連絡先を表示するのは標準対応と言える。家庭内という密室で起こる虐待は「数日間の様子見」が致命的な結果をもたらす場合があるからだ。
黄川田仁志こども政策担当相は、5月29日の閣議後記者会見で事件への見解を質問され、個別事案への回答は控えるとしたうえで「親子関係に悩みを抱えている場合は躊躇せず児相に相談してほしい」と語ったという。
今回、ネット上では児相への通報や警察が動いたことが過度な対応であったとする声があるが、こういった声は「虐待かもしれない」と悩む人の通報を躊躇させてしまいかねない。これを懸念してのコメントだろう。
もっとも、長女が周囲の大人に相談した場合、「単なる親子げんかなんだから」などと諭されて終わった可能性が高いであろうし、長女が児相への連絡を後悔しているように見える手紙の内容をそのまま受け取るのであれば、AIへの相談はしないほうが良かったのかもしれない。
しかしこれは結果論から見た人間の考えであり、最悪を想定して動いた児相や警察はもちろん、AIの回答も専門的見地から見れば間違っていたとは言えない。
さらに言えば、AIに相談した長女の行動も、浅はかというより、「AIにしか相談できないほどその瞬間は深刻に悩んでいた」「AIに示された連絡先へ連絡するほど切羽詰まっていた」と捉えるべきだろう。AIを責めるのであれば、DVや虐待のグレーゾーンを子どもが気軽に相談できる場が限られている現状を振り返るべきではないか。
もちろん、AIは万能ではない。誤った情報を提示することもあれば、人間同士の関係性や感情の機微を十分に理解できない場面もある。それでも、24時間利用でき、否定や嘲笑、拒絶を恐れずに相談できる相手として、多くの人にとって重要な存在になっていることも事実だ。
結果を見てChatGPTに相談した行動を「AIに惑わされた」と片付けるのは簡単である。しかしそれを結論とすべきなのだろうか。
AI相談が当たり前になりつつある時代であることを認めつつ、AIで補える部分とAIでは補えない部分を把握していくべきだ。そして声を上げづらい人のための相談や支援の場は多すぎることはないと肝に銘じておきたい。







