搾った直後は、通常等級付きの山田錦で造った「純米大吟醸50」に勝るとも劣らない酒質ができるとしても、3カ月経つと差が開いてしまうのです。そのために、早く飲んでもらう工夫が必要になります。
この酒を無制限に出してしまうと、理解のない流通や飲食業界で日数が経って劣化した状態で消費者の手にわたってしまう危険性があります。正規の取引先でない、プレミア価格目的の転売業者が跋扈していることもあり、彼らに等外の事情を理解してもらうことは不可能です。
そこで頭に浮かんだのが大手居酒屋チェーンの「和民」です。
和民なら「等外」を出荷後1カ月以内にお客様に飲んでいただける販売力があります。そして、「等外」の商品の背景をお客様に説明していただける機能もある。創業者の渡邉美樹さんは農業支援などの社会貢献に熱心です。
獺祭が「等外」でやろうとしていることも発端は農家へのリスク軽減です。そのあたり、シンパシーを感じたことも追い風になりました。
「獺祭 等外」は米作の等級制度と本醸造や純米など特定名称酒の表示基準の矛盾の克服という性質を持った商品です。だからこそ、美味しくなければ意味はない。社会貢献だから美味しくなくてもいいという言葉は獺祭にはありません。
ふだん取引のない農家まで
続々と等外米を持ち込んだ
その後、2016年には、さらに山田錦の等外米を23%まで磨いて「獺祭 等外23」を発売しました。35%まで磨いたものが美味しいのだから、さらに磨いたらどうなるんだろうという思いもありましたが、実はこの年、等外米の購入量が計画以上の量になっていたという別の理由もありました。
「獺祭に持っていけば等外米を買ってくれる」という情報が農家に行きわたりすぎて、1等2等の山田錦を他の酒蔵に出している農家までが、等外米は獺祭に持ってきたということが無きにしも非ず。それを気前よく、うちの購入担当が受け入れてしまったという背景もあります。
「ええ加減にしろよ」と仕入れ担当者に言ったものの、すでに買っちゃったのが、総数1万3000俵。結構、堪える数字です。







