この事故は、現場からすると「仕方のないこと」の積み重ねの結果で、「自分たちの責任ではない」つもりだったと思います。酒造業界では「この程度のことは仕方のないこと」としてトラブル扱いされないような話です。しかし、旭酒造(編集部注/酒造メーカー・株式会社獺祭の2025年5月までの商号)としては、今まで回避してきた、今回も回避できた「はず」の失敗でした。
「先進的な蔵元」の実態は
ただの無責任体制だった
ここ数年、社内組織の確立を図り、集団指導体制を製造部門に取り入れてきました。技術的蓄積も図ってきました。愚かにも日本でもトップクラスの体制だと信じていました。それが組織の弱体化と担当者個々の無責任体制につながっていたことに気が付きませんでした。
『獺祭 経営は八転び八起き』(桜井博志、西日本出版社)
社員の人数が少なく出荷量も少なかった頃は、「ど」素人の集団で、組織もいい加減なものでした。組織論の知識も持っていません。だから、行けと言われれば前に進む、それがうまくいかなければ修正する、一見かっこ悪くても実戦に強い集団でした。
それがいつの間にか、なんだかんだと理由を付けて新しいことをしない、危機が予想されても先手を打たない、反対に何かやって失敗することのほうを恐れる。そんな集団になっていたのです。
今回のことで、社内体制の弱点を見逃していた自分に、蔵元としての覚悟の甘さに慄然とし、もぐら叩きのように次々に起こる個別の問題や欠陥に対処するだけで精いっぱいの情けない状況に、ただただオロオロするばかりでした。
事故発覚後、再度ラインを見直して出てきた案は、充填機からキャップソーター(王冠供給器)に行くまで待たず、充填後即座に人手でライン上の瓶にキャップを被せればいい、そうすれば虫が入る確率はたとえクリーンブースまで侵入されていたとしても可能性はほとんどなくなる、ということだったのです。何でこんな初歩的なことに気が付かなかったのか。何で機械に任せていたのか。機械を作ったのは人間だから欠陥があるのは当たり前なのに、みんなが思考停止状態になっていたんです。
自分自身が悔しくてはがゆくて、当たり前だと思っていたことをぶち壊して一から再構築することを決意しました。







