自由貿易は利益を最大化するという意味では有効だが、農業に関しては、食料安全保障や環境保護とのバランスをどのように取るかが大きな課題だ。船井総研を経て専業農家になった有坪民雄氏が、矛盾をはらんだ「農業自由貿易化」の負の側面をあぶり出す。※本稿は、有坪民雄『誰も農業を知らない2 SDGsを突きつめれば、日本の農業は世界をリードする』(原書房)の一部を抜粋・編集したものです。
デヴィッド・リカードによる
絶対優位と比較優位
イギリスとポルトガルでぶどう酒と毛織物を作るとします。生産量は両国とも同じ1単位で、ぶどう酒、毛織物1単位を生産するのに、イギリス、ボルトガルは下記の人数が必要です。
ボルトガルはイギリスが120人で作る量のぶどう酒を80人で作ります。毛織物もイギリスが100人で作るところをポルトガルは90人で作ってしまいます。どちらもポルトガルの方が安く作れます。したがってポルトガルは対イギリス貿易ではポルトガルが一方的に輸出する国になりそうです。これを絶対優位と言います。
これに対し、デヴィッド・リカードという経済学者は比較優位と言う考えをひねり出しました。比較優位とは、最強とは言わないが、わりと強い分野に力を集中したら優位に立てることを言います。
ぶどう酒の場合、イギリスとポルトガルの生産性の差は120対80で1.5倍の差があります。しかし毛織物は100対90で1.1倍程度しか差がありません。
するとこんな仮説が成りたちます。