まず、私たちの安全保障、抑制と均衡のシステム、ガードレールは十分に強固ではありませんでした。これらの規範をより明確に表現し、法律として成文化し、法を尊重しないトランプのような権威主義的な人物に対して、どのように法を活用できるかをより深く考える必要があります。

 第2に、規範と法律は、その根拠が社会に広く理解されて初めて支えられるということを、私たちは今こそ認識すべきです。法の支配を持続可能にするような考え方を、社会全体に醸成するために、私たちはより多くのことを実行する必要があります。

 最後に、私たちの社会には、政府の内部だけでなく、社会全体における抑制と均衡が必要です。権力が過度に集中すると―――例えば、アメリカでオリガルヒ(寡頭層、新興財閥)の富が拡大し、経済的権力が集中するような場合――必ず深刻な影響が生じます。

 経済的な権力は、やがて政治的な権力へと転化していくのです。政府だけでなく、社会全体においても抑制と均衡が必要です。より平等な社会を築くという課題は、単なる道徳的な課題ではなく、民主主義の存続に不可欠な政治的課題なのです。

※近著『スティグリッツ資本主義と自由』山田美明訳(東洋経済新報社)

「アメリカは今、文革を経験している」ノーベル経済学者がトランプ政権をかつての中国になぞらえるワケ『あなたの知らない「世界の新常識」』スラヴォイ・ジジェク、ジョセフ・E・スティグリッツ、エリック・カウフマン、ジェイソン・ヒッケル、ジョセフ・ヘンリック、ジャック・アタリ、ミチオ・カク、ジェレミー・リフキン、大野和基(インタビュー・編)(集英社インターナショナル新書)