「“言語化”疲れで、“言語化”という言葉にモヤモヤする」
「即答するよりじっくり考えるほうが大事なのでは?」
「別に“口下手”のままでもいいじゃないか!」…

など、まったく新しいコミュ力を説いた書籍『言語化だけじゃ伝わんない –––– 絵を描くように「考える・伝える」技術』が発売された。著者でイラストレーターのヤギワタル氏は、これまで200冊以上の書籍でイラストや装画を担当してきて、今回が初の単著となる。本書では、昨今の「言語化ブーム」に対して警鐘を鳴らし、「言語化“以外”に目を向けること」をイラストレーターならではの視点で面白く解説している。本記事では、その中からビジネスパーソンにも役立つノウハウとして紹介する。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)

子どもの「言語化力」を高めるトレーニング・第1位とは?

子どもの「言語化力」

 子どもの言語化力を伸ばしたい。

 そう考える親は少なくありません。

 語彙を増やしたほうがいいのか。
 本を読ませたほうがいいのか。
 作文を書かせたほうがいいのか。

 もちろん、それらも大切です。

 しかし、『言語化だけじゃ伝わんない』という本では、もっと根本的な方法が紹介されています。

 それは、「言葉を教える前に体験させること」です。
 なぜなら、人は言葉そのものではなく、経験と結びついた言葉を本当に理解するからです。

記憶に残るのは「言葉」ではなく「出来事」

 本書では、まずこんな一文が紹介されています。

経験はエピソードとして記憶されます。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より

 これはとても重要な視点です。
 私たちは辞書のように言葉を記憶しているわけではありません。

 楽しかったこと。失敗したこと。驚いたこと。恥ずかしかったこと。
 そうした出来事と一緒に言葉を覚えています。

 だから、体験を伴った言葉ほど忘れません

 逆に、辞書的な説明だけで覚えた言葉は、すぐに抜け落ちてしまうのです。

「ヤバい」は辞書では教えられない

 本書では、「ヤバい」という言葉を例に挙げています。

たとえば、「ヤバい」という言葉。
仮に「ヤバい」という言葉の意味を知らない人に「ヤバい」意味をわかってもらうにはどうしたらいいでしょうか?
もし、1コマで表現する場合は、「朝9時に起きた人」の絵で「これがヤバいです」と説明することになります。
これを2コマ漫画にしてみます。
1コマ目で、「取引先との重要な会議が朝9時から始まる」の絵を見せる。目覚まし時計をセットしている状況でもいいでしょう。
2コマ目で、「起きたのが9時だった」の絵を見せる。
この2コマの流れを見せてから、あとで「これがヤバいということです」と説明する。
会議が始まる時間に起きたことが「ヤバい」とわかるはずです。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より

 ここに、言葉を教えるコツがあります。

 先に意味を説明しない。
 先に状況を見せる。
 先に出来事を体験させる。
 そのあとで言葉を教える

 そうすると、その言葉は単なる知識ではなく、生きた言葉になります

子どもは「体験→言葉」の順で学ぶ

 本書では最後にこう語られています。

言葉の定義としてはとても狭く感じるかもしれません。
でも、これがまさに、「事実を先に体験」し、あとからそこに「ラベルを貼る」ということです。
言葉だけで捉えるよりも、地に足のついた「ヤバい」が使えるようになると思います。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より

 これは子育てにも大きなヒントを与えてくれます。

 たとえば、「感謝しなさい」と言うだけでは、なかなか伝わりません。

 しかし、誰かに助けてもらった経験があったあとならどうでしょう。
 そのときに、「こういう気持ちを感謝と言うんだよ」と伝えれば、言葉が体験と結びつきます。

「責任」「努力」「挑戦」「後悔」…。こうした抽象的な言葉も同じです。

 先に経験があり、そのあとに言葉が来る
 だから本当に理解できるのです。

「説明」ではなく「体験」で育つ

言語化だけじゃ伝わんない』は、言葉の学び方そのものを見直させてくれる本です。

 子どもの言語化力を高めたいなら、難しい言葉を教えることから始める必要はありません。

 むしろ逆です。たくさん遊ぶ。たくさん失敗する。たくさん驚く。たくさん悔しい思いをする。そうやって経験を増やしていく

 そして、その体験にあとから言葉を貼っていく
 それこそが、最も自然で、最も強力な言語化トレーニングなのです。

 言葉を覚えさせるより先に、人生を経験させる
 それが、子どもの言語化力を伸ばす一番の近道なのかもしれません。

ヤギワタル
1981年静岡県生まれ。制作会社にて、雑誌タイアップ広告の制作進行を務めたのち、フリーランスのライターを経験。国際情勢関連の英日翻訳をやりながら、2011年からイラストレーターの活動をスタート。現在は書籍・雑誌・広告など幅広く活動中。特に、ビジネス書や新書での挿絵や図解を担当することが多く、10年以上、活躍している。
これまで、装画・イラストを担当した書籍は200冊以上。『言語化だけじゃ伝わんない –––– 絵を描くように「考える・伝える」技術』(ダイヤモンド社)が初の単著となる。