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高額療養費制度の見直しでは、「自己負担が大幅に増える」との報道が目立つ。しかし、多くの現役世代では負担増は数千円から1万円前後にとどまるケースが少なくない。むしろ見落としてはならないのは、来年導入される「所得区分の細分化」と今年新設される「年間上限」である。制度を30年以上見てきたFPが、本当に注意すべき変更点と、その落とし穴を解説する。(ファイナンシャルプランナー〈CFP〉、生活設計塾クルー取締役 深田晶恵)

引上げ後の負担増は
数千円に留まるケースがほとんど

 2026年8月実施の高額療養費制度の見直しで「負担が大きく増える」と不安視する声が相次いでいる。しかし実際には、多くの現役世代の負担増は数千円から1万円前後にとどまるケースも多い。

 それよりも筆者が問題だと考えるのは、来年導入される所得区分の細分化と、今年8月に新設される「年間上限」に潜む落とし穴である。

 上限額が引き上げられる背景は、高齢化の進展や医療の高度化、そして抗がん剤をはじめとする高額な新薬の登場だ。これにより医療費全体が年々増大していることを踏まえ、上限額は今年8月、来年の8月と2段階で引き上げが実施される。

 公的医療保険には高額療養費制度があり、医療費が高額になっても一定の上限額までの自己負担額で済む。上限額は、所得により区分され、さらに70歳以上か未満かでも異なる。

 下表は70歳未満の高額療養費上限額だ。所得区分ごとの見直し前と見直し後(26年8月から27年7月まで)の上限額をまとめた。

図表:高額療養費制度出所:深田晶恵氏作成
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医療費が100万円の場合
負担額はどのくらい変わる?

 具体例を見てみよう。

 50代の会社員で月収40万円の人が、大腸がんの手術を受け3週間程度入院し、医療費(10割の金額)が100万円かかったとする。3割負担では30万円だが、高額療養費の適用により、引き上げ前の現行制度では自己負担は8万7430円で済む。

 では、8月になるといくらになるか。このケースでは「9万2940円」と月約5500円負担が増える。高額な新薬の登場など、引き上げの背景を考えると、驚くほどの負担増ではないと言える。

 今回の高額療養費の見直しのポイントは、おもに次の4つだ。

(1)上限額の引き上げは26年8月、27年8月の2段階に分けて実施
(2)「多数回該当」の引き上げは行わない
(3)2回目の引き上げでは、所得区分を細分化する
(4)「年間上限」を新設

 実は、筆者が問題視しているのは、(1)の引き上げではなく、(3)と(4)である。詳細は後述するので、まず順番に解説していこう。