海外ではいまだに“本物の日本人職人”が少なく、彼らの技術や所作は唯一無二のブランドになっています。寿司という料理自体が、単なる食事ではなく「日本文化の体験」として受け止められているため、価格競争が起こりにくい。特にアメリカや中東の富裕層は、「本場の日本人が握る寿司」を社会的ステータスとして求めており、その希少性が価格に反映されています。

 もう1つの理由は、寿司のビジネスモデルにあります。

 高級店の場合、カウンター8~10席で1日2回転すれば、月商は1000万円を超えることも珍しくありません。原価率は日本とほぼ同じく40~50%前後で、残りは人件費、家賃、物流費などに充てられます。ニューヨーク中心部で家賃が月100万円を超えるような立地でも、単価が高いため十分採算が取れるのです。

 また、欧米では「チップ文化」によりスタッフの給与も高く設定でき、優秀な現地人材を確保しやすい。現地の食文化やライフスタイルに合わせた柔軟な経営ができれば、持続的に利益を上げることが可能です。

海外の寿司ビジネスで
成功するコツとは?

 とはいえ、海外で寿司店を成功させるのは簡単ではありません。

 仕入れは日本からの空輸が多く、物流コストは日本国内の3~5倍に膨らみます。さらに、魚の入荷遅延や品質劣化のリスクも大きい。現地の衛生規制や営業許可なども国によって異なり、開業までに1年近くかかるケースも耳にします。

 それでも成功している店は、単に“寿司を出す”のではなく、“ストーリーを提供”している点がポイントになっているように思います。

 例えば、ドバイの「TakaHisa」では、カウンターの前に立つ職人がその場で魚の産地や熟成の工程を語りながら提供します。客はそれを“ショー”として楽しみ、体験価値として対価を支払う。こうした演出が、高価格でも顧客を納得させる理由になっています。