理想的な相手なのに…「結婚を迷う人」だけが気づく決定的な違和感〈風、薫る第56回〉

安、結婚を考え直す

「結婚、先に延ばせないかな」

 まさか槇村宗一(上杉柊平)ではなく、弟・太一(林裕太)のことが気になっている?と慌てるりんと美津(水野美紀)。

 安は栃木にいた頃、りんと遊んだ女の人生双六(「江戸娘一代双六」)で、上がりの奥様が地味で、幸せそうに見えないとりんが言っていたことを思い出していた。

 あの頃(第1週)、りんは「奥様来い!」と双六の上がりを強く念じながらも、描かれた奥様が地味で、御新造さん(武家や商家の若妻)のほうが派手だと気づいていた。女の人生の上がりが果たして、地味な奥様でいいのか、疑問が提示されたのが、『風、薫る』のはじまりだったのだ。

 りんは一度は地味な奥さんになり、いまは看護婦として自立を目指すようになった。

 安も結婚を前に、奥様はほんとに幸せなのか考えはじめていた。

 りんは、元気のない環(英茉)に「きばってこ」と励まして、とりあえず顔合わせに向かうが、その顔合わせの場面は描かれない。

 うまくいったけど疲れたと、だらだら帰ってくる美津とりんと安と環。

 そこで安は言いだす。

「私、結婚やめようかな」

 宗一は手堅い仕事に就いていて、人柄も穏やかで結婚相手としては理想的。

 そもそも安は小さいときから奥様になりたかったのだからちょうどいい。でもなぜか、いまは、奥様になることに気が進まない。

 その頃、相手の宗一は顔合わせがうまくいったとシマケン(佐野晶哉)に報告に来ていた。

 こちらもこちらで、結婚を太一が言うところの「ミッション」――「長男としての役目」と認識していた。

 つまり、安も宗一もどちらも社会のルールに沿って淡々とことを進めているだけで、結婚に対して1ミリもワクワクしていない。安は宗一にはじめて会ったとき一目ぼれ的にときめいたのかと思ったが、理想の結婚相手ロックオン!とギラギラしていただけだったのか。

 純粋に心ワクワクさせているのは、太一だけだ。安のことが好きになった太一は片思いながら、感情を高鳴らせている。顔合わせの席でも積極的で。

 シマケンが気を使って、太一に「弟として頑張ったんだな」と話しかけたり、「このまま、結婚ってことになったら、俺」という太一を見て、宗一に「このまま結婚ってことになったら、楽しみですね」と話題を振ったりなど、今日のシマケンはひじょうに涙ぐましいものがあった。