感情労働の職場に向いているのは、人が好きで、人との摩擦を怖れず、人の成長には時間がかかることを知っている人でなければなりません。そもそも、怒りの沸点レベルが低い人には向かない業態なのだと言っても過言ではないでしょう。

 まずは、自分自身が「感情を大きく揺さぶられるような特性のある仕事に就いているのだ」という前提に立つ必要があります。そして、目の前の出来事への寛容度を高く保ち、少々のことにも心を揺さぶられない覚悟をもつことが大切です。

教師がイライラする理由は
「あれもこれも最優先」だから

「そう頭では理解できていたとしても、実際はそこまで気持ちにゆとりのある状況ではない」と言いたい方も多いのではないでしょうか。私も、学校現場に漂う窮屈さや、納得のいかない事態に日々直面している一人です。気持ちは痛いほど理解できます。

 では、感情を揺さぶられる「源流」は一体どこにあるのでしょう。

 ジャーナリストの前屋毅氏は、著書の中で、教師がやたらイライラしている理由の1つに「あれもこれも最優先」という圧力があると看破しています(前屋毅『ブラック化する学校:少子化なのに、なぜ先生は忙しくなったのか?』pp.185-187、青春出版社、2017年)。

 たとえば、いじめや自殺の件数が過去最高になったという統計を受け、有識者会議によって「いじめへの対応や自殺予防を最優先の課題」として位置付ける提言がまとめられます。教師がいじめ対応や自殺予防に取り組むのは当然のことなのですが、だからと言って、授業準備や学校行事を「二の次にしてよい」ということにはなりません。

 教師の立場からすれば、最優先事項が1つ増え、2つ増え、あれもこれも最優先になっていきます。こうして、本来最も優先しなければならない授業準備や学校行事に「手が回らない」という事情が生み出されていくというのです。

 前出の前屋氏は、同書のあとがきの中でこう述べています。

「教員にしてみれば、あれもこれも最優先と押し付けられているのが現状である。教員の数が足りているならいいが、とてもそんな状況にないのが学校だ。最優先という言葉だけで満足な対応を求められても、それは酷な話でしかない。といって、だから対応できなくても仕方ない、で済まされる問題でもない。(中略)これでは学校が混乱するのも無理はない。混乱するだけでなく、学校のブラック化を加速させることにしかならない」