「真の士気」とは何か
稲盛さんから教わったこと

 返品が発生したのであれば、なぜ発生したのか。

 品質に問題があったのか。

 営業活動に問題があったのか。

 顧客対応に問題があったのか。

 その原因を明らかにし、改善しなければならない。

 数字を操作すれば、一時的に見栄えは良くなる。

 しかし、問題は残り続ける。

 病気を治すのではなく、体温計を壊しているようなものだ。私は後になって、稲盛さんが見ていたものを理解した。

 経営とは、都合の良い数字を見ることではない。現実を正しく見ることである。

 そして、厳しい現実を受け止めた上で改善を続けることこそ、本当の士気につながる。

 あの日、稲盛さんは新入社員だった私を容赦なく叱った。

 今になって思う。あの叱責は、返品処理の話ではなかった。経営者としてのものの見方を教えるための叱責だったのだ。

「そんな士気は“ニセモノ”や」

「お前は、ニセモノの士気で俺に仕事をさせるのか」――。

 この言葉は半世紀以上たった今でも、私の心に深く刻まれている。

 そして私は今も、組織を率いる人に伝えたい。

 数字を良く見せることよりも大切なものがある。それは、現実から目をそらさないことだ。

 真の士気は、その先にしか生まれないのだ。