そうしたまわりの風景の広大さと、魔法のような多様さを思い描いてみよう。そうしたら、今度は線路の左のずーっと向こうに目を向ける。それはあなたの過去だ。あなたの来し方や、これまで旅してきた土地だ。その方向へ、線路をずっとたどってみよう。歩いていくと、これまでの人生が見渡せる。

 目の前には、あなたの身に起こったすべてが広がっている。それが見えたら、特に記憶に残る出来事をいくつかピックアップする。

 思い出すのはたぶん、愛にまつわる思い出だろう。はじめての子どもを腕に抱いたときの感触。かけがえのない記憶だ。

 カリブ海の島へ家族で旅行に行き、楽園で何日か過ごしたことでもいい。はじめてのマイホームをついに手に入れた思い出はどうだろう。狙っていた仕事に就けたことは?なんでもいいので、そうした夢のような思い出に浸ろう。

 人によって差はあると思うが、振り返るべき最高の経験は何十個、あるいは何百個もある。卒業、昇進、受賞、仲間、恋人。心が安らぐ子どものころの小さな思い出や、ほっこりした気持ちになれる懐かしの味や光景、音でもいい。心を開き、素晴らしい日々に立ち戻ることを自分に許してあげよう。

乗り越えてきた数々の困難が
今の自分を形づくっている

 しかし残念ながら、このアプローチは甘美な思い出を振り返るだけでは終わらない。次はイヤな思い出を振り返らなくちゃならない。つらかった時期や苦しかった時期、打ちのめされた出来事を思い出そう。

 口げんか、別れ、スピード違反の切符、公共料金の督促状。こっそり家を抜け出そうとして、親にこってり絞られたことは?つらい子ども時代を過ごしたなら、それをすべて確認しよう。

 手術を受けて何日も病院のベッドで寝て過ごしたことは?恋人と別れて何週間も絶望を味わったことは?深く心が傷ついた悲しい出来事から、ちょっとイラついたり残念だったりしたことまで、すべてを目にしよう。

『あなたはあなたが使っている言葉でできている』書影あなたはあなたが使っている言葉でできている』(ゲイリー・ジョン・ビショップ著、高崎拓哉訳、ディスカヴァー・トゥエンティワン)

 問題をすべて思い出し、そして乗り越えよう。過去の問題の多くは、よく見ると、あなたが今抱えている問題とすごく似ている。

 あなたは過去に、今と同じような気分を味わったはずだ。もう二度と恋人なんてつくらない。これ以上の仕事なんて見つかりっこない。こんな恥ずかしい思いをしてもうこの先生きていけない。

 しかし、あなたは生きている。立ち上がって、また歩み出した。そして今から振り返ると、問題の中には小さなことに思えるものもある。

 高校の数学のテストでDを取ってパニックになったことが、あるいは気になっていた男の子や女の子と2回目のデートに漕ぎつけられなくて最悪の気分になったことが、今のあなたには信じられないはずだ。

 もっと深刻な問題も、今ではだいぶ違って見える。つまるところ、あなたはその苦境をどうにかこうにか乗り越えてきたわけで、その経験が今のあなたを形づくっているのだ。