イランを中国シフトさせた経済制裁

 まず確認すべきは、イランがなぜ中国に依存してきたのかを示す構造的背景だろう。

 イランが中国に接近したのは、同じ反米の立場にあるからだけではなく、アメリカによる経済制裁によって、イランが国際金融・通常の原油市場・西側企業との取引から切り離されたからである。乱暴に言えば、原油を売る先を失い、主要な買い手として中国が浮上したからである。その後は、中国の独立系製油所(いわゆる「ティーポット製油所」)が制裁下のイラン原油の受け皿となってきた。

 この構造は、イランにとって必ずしも喜ばしいものではない。買い手が限られれば、価格交渉力は弱まり、安価で売らざるをえない。決済も通常のドル建て金融ではなく、使い勝手の悪い人民元でなされ、非公認両替商やフロント企業、シャドーバンキングや船舶偽装など、コストの高いルートに依存するしかない。

 イラン経済は中国に原油を売ることで生き延びたが、同時に、中国に弱みを握られることで経済停滞を強いられた。

 それとは逆に、中国にとっては大きな利益となった。制裁で行き場を失ったイラン原油を安く買いたたけるし、イランが国際金融に戻れない限り、中国はイランに対して大きな影響力を保持できる。

 今回、アメリカがイラン攻撃で狙ったのは、まさにこの「中国によるイラン支配」の構造の破壊である。

制裁経済の最大の勝者は革命防衛隊

 イランの中国依存を考えるうえで、もう一つ重要なのが革命防衛隊である。

 革命防衛隊は単なる軍事組織ではなく、建設、石油、港湾、物流、通信、金融、密輸ルートに深く入り込んだ巨大な企業体(コングロマリット)である。通常の民間企業が国際金融から締め出され、合法的な輸出入が難しくなるほど、裏の金融、密輸、船舶偽装、迂回貿易を扱える勢力の価値は高まる。

 アメリカの制裁はイラン経済に大きな打撃を与えたが、同時に、制裁をかいくぐる能力を持つ革命防衛隊の経済的地位を強めてしまった。制裁下では、透明な企業よりも、不透明なネットワークを持つ組織の方が生き残りやすいからだ。

 中国依存と革命防衛隊のイラン経済支配は表裏一体の関係にある。中国向けの原油販売や人民元決済、闇のネットワークによる取引はイラン経済全体を弱体化させたが、革命防衛隊にとっては安定した収入源になってきたのである。

 アメリカがイランを中国依存から脱却させるためには、イラン政府との交渉だけでは徒労に終わる。革命防衛隊を叩き、対中仲介権を奪わなければならない。

 今回の復興基金は、そのために必要な資金なのである。