時間は多少かかったが、車載ナビ部門も次第に損益が改善してきた。ある時、業績説明を聞いている中でトヨタの高級車レクサス向けの純正ナビ用液晶が大幅な赤字だということがわかった。トヨタのシンボル的な車なので、絶対に他社に渡さないと安値でとったらしかった。生産能力不足の中、トヨタのシンボル車のラインを止めてはいけないとの配慮で、他の数量を削って作っている製品である。

 私は、それならと、

「レクサス向けが赤字でその原因が計算間違いであることを新任社長に見つかってしまった。新任社長は激怒して、トヨタ・レクサス向けが赤字では、今後の改善活動ができず、結果としてトヨタに迷惑かけることになる」

 と話すように言った。そして、赤字の内訳を説明した上で丁寧に謝り、

 「間違いを訂正する値上げを認めてほしい、そうしないと出荷ストップだと言われてしまいました。そのような事態を避けるため御社に来た次第です」

 と説明して来いと指示した。ちょっと調子に乗り過ぎかなと思ったが、無事値上げは受け入れていただいた。こうして機会があるごとに値上げを行い、損益は順調に回復したが、最大の懸案である供給不足問題は相変わらず未解決であった。

 TMD社が新しい供給方針を説明し始めたのは11月ごろであったと思う。しかし、台湾の液晶メーカーを決定し、技術指導等の期間を考慮すると外注品の出荷は2011年4月にならざるを得なかった。それまではメーカー純正を優先しつつ、市販品メーカーにも可能な範囲での対応はせざるを得ないが、ラインを止めない自信は全くなかった。

 この方針を決めてしばらくたった2011年2月初め、独アウディから強烈なクレームが日本のナビメーカー経由できた。ラインダウン(生産ラインのストップ)直前となっており、もしラインダウンしたら日本のナビメーカーと絶縁するとの内容だった。私は、直接会って話すしかないと思い、2月初め、ドイツ、インゴルシュタットのアウディに単身飛んだ。

 生産能力不足に陥った理由、今どのような生産調整をしているか、そのなかでのアウディの扱い、今後は優先度により出荷を行っていくが、それが機能し始めるのは4月からで、それまで待ってほしいこと。もちろんアウディは最優先グループに位置づけていること、等々を説明した。