供給問題への基本的な方針は決めたものの損益的にはメーカー純正の赤字が最も大きかった。主要な自動車メーカーは、日本はトヨタ、日産、ホンダ等、海外はフォード、アウディ、現代等であった。

 赤字の理由については、以下のような説明だった。08年のリーマンショック不況で、大幅に注文が減少した際に1個でも多く売ろうと価格を下げて売ったが、需要が回復したからといって、一度下げた価格を元に戻せないという。

 素人社長の私にとって、生産能力以上の注文が来て、やっとの思いで出荷しているものが赤字であるというのは全く信じられないことだった。メーカー純正の顧客に値上げを要請し、値上げを受け入れてくれた客から優先的に出荷したらどうかと提案したところ、それはできないとの返事だった。

 モデルチェンジ、マイナーチェンジ時ごとに競合状況を勘案して、納期、品質条件、価格を決定して注文をもらっている。それをこちらが赤字だからという理由で値上げはできないとの説明だった。それなら次の価格改定時に必ず黒字になるレベルまで価格を上げよう、と主張した。

 ところが自動車メーカーは価格が厳しいので、そんなことをしたら競合他社にシェアを取られますよ、と営業担当の答え。私が、自動車メーカーは、TMD社のどこを一番評価して注文を出してくれるのか、納期、品質、価格、で順番をつけろと質問すると、営業担当者は「その全てです」と回答。

 私は、自動車会社は間違いなく納期、品質が一番重要で、価格はその次だと思う、従い、次の契約更新時には競合他社と納期、品質の優位性を確認し、優位性がある場合は必ず適正な経費率をオンして、赤字にならないレベルの値上げをすることを指示した。それで注文を減らされたり、切られたりしても営業の責任にはしないと強調した。

 そしてその後の契約更改時、多くのケースでシェアを下げられることなく値上げは成功した。なかにはいきなり大幅値上げとなると社内の説明が難しいので2回に分けて値上げをしてくれとのお願いもされた。