資産のはずが、「維持費のかかる負担」に変わる

『結局、大金を手にして、別荘を複数買ったところで、自分の体は一つしかないわけで、それが別荘の限界だよね。ってすっごいお金かけて別荘複数買わなかったらこんなこと考えないので、まあ勉強になったわ(笑)』

 富裕層ならではの贅沢な悩みに聞こえるかもしれません。

 しかし、相続税の申告書を見ていると、この言葉には案外重みがあります。なぜなら、その答えが相続税の申告書に残されているからです。

 人が亡くなった後、10カ月以内に税務署に提出する相続税の申告書には、その人が生涯をかけて築いた財産が並びます。そして、預貯金や株式、不動産など、亡くなった時点の財産が時価ベースで評価され記載されています。どんな人生を歩み、何にお金を使ってきたのかも垣間見えるのです。

 富裕層の相続税の申告書の財産一覧を見ると、数十年前に購入した別荘が記載されているケースが多く、現在の値段は買った価格の10分の1以下の場合がほとんどです。まさに『二束三文』の値段が記載されています。

 購入時は数千万円から数億円だった別荘、あるいはリゾート地のマンション。しかし相続税評価を確認すると、価格は10分の1以下、時にはほとんど値段が付かないケースも珍しくありません。

 そして何より、多くの相続人はその別荘を利用しません。売却しようにも買い手が見つからず、値段が付けばまだ幸運な方です。実際は売りたくても売れず、結局、放置されたまま維持費だけがかかり続ける――そんなケースは決して珍しくありません。

 こうして別荘は「資産」から「維持費のかかる負担」へと姿を変えていくのです。

 軽井沢の北側、星野リゾートが運営するハルニレテラスの近くに別荘をもつ富裕層の方は、別荘との付き合い方が変わっていった過程をこう振り返ります。

「最初は念願のログハウスを建てたばかりで新しいし、子どもも小さいし、月に何回も行くんですよね」

 しかし、子どもの成長とともに利用頻度は徐々に低下していきました。

「段々子どもが大きくなれば行く頻度も減る。そうするとせっかく行っても掃除で1日が終わる」

 さらに数カ月ぶりに訪れると、別荘ならではの現実に直面することになります。

「広大なデッキでBBQでもやろうかと思ってシートを動かすと大量のカメムシがビッシリ…」

 問題はそれだけではありません。ログハウスは維持にも多額の費用がかかります。

「ログハウスはメンテに数百万円単位で本当にお金がかかる。建築費だけではなく、ランニングコストに多額のお金をかけているので手放そうと思っても、新しい買主となかなか値段で折り合えず…」

「放置すればするほど窓も全部閉めているのに家の中が虫だらけだし、ますます別荘から足が遠のいちゃうよね…。管理人を雇えるような本当のお金持ちが買うべきだよね」と言います。

 結局、「資産」として買ったはずのものが次の代では「負債」になるわけです。