一方で、そこにコストをかけるくらいなら高齢者を排除しようと考える不動産会社も、いまだ多い。
さらに、ガイドラインの上では告知義務がなくとも、死者を出せば事故物件の情報提供サイトを通じてその情報が拡散される可能性がある。そうなれば、物件の価値は確実に落ちる。これを嫌う不動産関係者は多い。
事故物件公示サイトの目的は、これまで明らかになりにくかった「事故物件」の情報を可視化し、物件を借りたり購入したりしようとする人が、事実に即した判断をできるように促すことだという。
その仕組みは、ボランティアと言われる人々から同サイトに「事故物件ではないか」と思われる情報が投稿され、集約されるというものだ。
例えば、2025年1月25日には25件もの投稿があった。そこには、該当する住所とともに、「自殺」「首つり」「投身自殺」「焼死」「アルコール中毒による急死」といった記載のほか、「孤独死」や「不審死」「事故物件」などのキーワードが記録されている。
『単身高齢者のリアル――老後ひとりの住宅問題』(葛西リサ、筑摩書房)
同サイトでは、不動産会社にとって告知義務にあたらない死、例えば、特殊清掃の必要のない自然死や、共用部など住戸外での死なども掲載対象とされている。なかには、誤報やデマ、嫌がらせなど、必ずしも正確ではない情報も含まれるようだ。
それについては、家主や不動産会社が申し出れば修正できるルールがあるが、そもそも掲載されていることに気づかない不動産関係者も多い。
住宅とは、生と死が行き交う場である。わずか数十年前まで、自宅で死ぬことは、当たり前のことではなかったか。それゆえ、無差別に死をあげつらう事故物件公示サイトのやり方への批判は多い。
とはいえ、その是非を問うためには、単に、不動産業界の便宜上の「事故物件」の定義を超えて、社会の側が、どの死を許容し、どの死を許さないのか。それを共有するところから始めなければならないのかもしれない。







