65歳以上のおひとりさま(独居高齢者)は736万人。おひとりさま“予備軍”ともいえるおふたりさま(65歳以上の夫婦のみ世帯)は693万世帯だ。未婚シングルの増加、配偶者との死別などで今後も増える一方だ。「ひとり死」が当たり前の社会が目前に迫る。特集『ひとり終活大全』(全24回)の#3は、生前からどんな準備をしておけばよいかを解説する。(ダイヤモンド編集部)
高齢おひとりさまは740万人!
孤独死は中高年男性だけの問題ではない
シニア生活文化研究所の小谷みどり代表理事は昨年、孤独死した人の自宅を特殊清掃する現場に立ち会った。
故人は60代の女性で、若かりし頃はキャビンアテンダントとして働いていたが、精神のバランスを崩して退職後は、両親と共に暮らしてきた。
数年前に父親が病死して以降は、認知症を患う母親と生活をしていたが、母親が脳梗塞を発症して入院したため、女性はひとり暮らしとなった。
女性の遺体が自宅の居間で発見されたのは、母親が入院して2カ月後のこと。遺体は腐敗が進んでおり、傍らの机には、食べかけのレトルトご飯が置かれていた。
認知症の母親は、いまだにひとり娘の死を理解できていない。持ち家や父親が残した資産もあるので、母子は生活保護などの行政支援を受けていなかった。
隣家には親戚が住んでいたにもかかわらず、近所付き合いがなかったために、ひとり暮らしになった女性は孤立し、遺体が何週間も発見されないという結果を招いた。
孤独死は中高年男性の問題という印象が強いが、友人ネットワークが十分でなければ、女性でも起こり得るという事例である。
厚生労働省の国民生活基礎調査(2019年)によれば、65歳以上の者のみで構成されている高齢者世帯のうち、単独世帯は736万9000世帯になる。
その構成比は男性が35%、女性が65%。男女別に年齢構成を見ると、85歳以上は男性が11.6%、女性は21.0%で、長生きの女性は必然的におひとりさま(独居高齢者)になることが多くなる(下図参照)。
おひとりさまの理由は、生涯独身、離婚、死別など人それぞれだ。それらの要因を分析すれば、おひとりさまは今後ますます増えていくことが容易に想像できる。