
シマケン、書評家になる?
シマケン、渾身の小説はどうだったのか。
「よかったよ、いままでのよりは」と綿貫。
「よくできてた」と言いながら、原稿を返す。
それを黙って受け取るシマケン。
返されたということは、新聞に採用する気はないということだろう。シマケンもそう理解したようで、「書評お引き受けします」と覚悟を決める。
このような夢と仕事の乖離はよくあることだ。やりたいこととやれることには違いがあり、シマケンは通俗小説の才能があった。芸術的、文学的なものよりも、大衆目線に近いものを書く力が。
シマケンに書評家のポテンシャルを設定したのは、令和の現実では、去年の紅白歌合戦の審査員にもなった書評家・三宅香帆さんが注目を集めていることと関係あるだろうか。ニッチな書評という仕事も、いまなら視聴者にも比較的わかりやすいだろう。
気が向くか向かないかはそれぞれだが、誰もが新たな門出を迎えた。
りんと直美は引っ越し初日、通勤路について揉めながら通勤してくる。
多江(生田絵梨花)とトメ(原嶋凛)はふたりが大げんかしていないか心配していたが、けんかするほど仲が良いのを見て胸をなで下ろす。
第67回ではこんなシーンがあった。りんが取締を外され、直美が代わりをやることになったことを知った多江が、そのせいでふたりの関係性が悪くなるのではと気を揉む。
でもそう思っているのを、ふたりに知られるのもよくないと思って、なんだか不自然な態度になる。
結局は多江の勘違いだったのだが。仲良くやっているようで、案外わかりあえていない職場の微妙な人間関係のズレ。もちろん、多江に悪気は全然なく、りんと直美を気にかけてのことであるのだが。
みんながりんを心配している。
山本(本田大輔)の手術の日。テイ(伊勢佳世)は「この人の言うことは嘘ばっかりですから、真に受けないでくださいよ」とりんに言うが、「でも、それでも励まされたんです」とりんは山本に感謝。
「自分が努力するより、下の者を育てるのはよっぽど難しい。答えが出るのはずっと先だ」
第67回で部下を持ったことがないにもかかわらず、さも部下がいる苦労を知っているかのようにりんに語った山本。たとえそれが実体験のない言葉、つまり嘘でもりんは励まされたのだ。
以前シマケンの創作が夕凪を少しだけ癒やしたように。事実でなくても出まかせでも、人を喜ばせることは可能だ。うまい嘘ならむしろ喜ばれる。
上手な嘘は寛太が得意としているものだ。
シマケンが綿貫に言われた言葉も、嘘か本当かわからない。シマケンは励まされたと思って書評を引き受けたのか、それとも、傷つけまいと「よかったよ」と言われたと思ったのか。
言葉は額面通りに限ったものではない。言葉の裏にある意図を推察するリテラシーが必要。それこそが人間が行える高度なコミュニケーションだ。








