「この案件はまず部長に話を通さなければ進まない」「この時期にこの提案をしても予算の都合で通りにくい」「この取引先は過去にこういうトラブルがあった」といった情報は社内で長く働いていなければ分からないものです。

 新卒や中途で入ってきた人は、制度や組織図を見ればフォーマルな構造は理解できますが、実際に会社を動かしているのは前述した暗黙知の部分なのです。組織の文脈に通暁していることは中高年社員だけが持っている見えざる資産です。

 もう一つの武器が人的ネットワークです。

 長く会社にいると、社内のインフォーマルなネットワークを熟知することになります。「ちょっと相談していいですか」と気軽に声をかけられる相手がいたり、正式な会議を設定しなくても、来週ちょっと飲みに行こうよと言って、事前に現場の状況を確認したり、資料を出す前に実務上の懸念を教えてもらったり、非公式なサポートが得られるのです。

 若手は社内に相談できる人が少ないので、正式ルートを通らなければなりません。時間もかかり、間違った相手に相談して遠回りすることもある。平たく言えば、顔の広さがいかに大事かということです。

マウントではなく「還元」
中高年の評価を上げる方法

 そんな中高年社員に必要なことは、自分が損をしていると考える前に、自分が持っているものを「棚卸し」してみることです。

 過去の貢献によって積み上がった給与水準や退職金、そして見えざる資産である長年の経験、社内の人脈、企業固有知識といったものをまず把握してください。

 そのうえで「見えざる資産」を若手に伝えていってほしいのです。会社が中高年社員に求めているのは、知識の継承であり、人材育成です。そうした行動こそが中高年社員の評価対象になっていきます。

「この会社ではこうなんだ!」「お前らは給料が高いくせに何もわかっていない」という態度ではなく、若手が躓(つまず)きやすいポイントや社内での動き方を教えたり、他部署と橋渡しをしてあげたりするのです。

 高い初任給の若手を敵視するのでも、羨望のまなざしで眺めるのでもなく、自分が実は豊富に持っている資産を再認識して、若手のためにその資産を還元し育てる側にまわってください。そうすれば「組織に経験を還元できる人」として、自身の価値を示すことにつながります。会社はそれを評価し、中高年社員自身の昇給にもつながっていくはずです。
 

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