AIの思想の偏りが
人々に与える影響は大きい
また、AIを開発する巨大テック企業のトップの考えも、AIの人格に色濃く反映されるでしょう。たとえば保守的な傾向を持つイーロン・マスク氏が率いるX社のAI「Grok」は、保守的で自由奔放な色合いを帯びるかもしれません。一方で、マーク・ザッカーバーグ氏が率いるMeta社のAIは、リベラルで調和を重んじる価値観を示す可能性が高い。
こうした偏りが、日々の何気ない生活相談や「どう生きるべきか」という深いテーマに入り込んだらどうなるでしょうか。学校の先生の言葉にその人の思想や価値観がにじみ出るように、AIのアドバイスにも必ず色がつきます。
しかも、AIは先生よりもずっと身近で、24時間あなたに寄り添っています。その影響力は、もはや教育現場のそれを大きく超えてしまうかもしれません。
『2034 未来予測――AI(きみ)のいる明日』(中島聡、徳間書店)
私たちがどの企業のAIを「親友」に選ぶかによって、無意識のうちに特定の思想に触れ続け、世界の見え方そのものが形づくられていくリスクがあるのです。
これまでSNSで起きていた「エコーチェンバー現象(自分が共感できる意見ばかり届き、価値観が固まってしまうこと)」は、AIの親友化によってさらに深刻になります。人は「自分に異を唱える不快なAI」を避け、自分を肯定してくれるAIだけを選ぶようになるからです。
保守的な人は保守的なAIと、リベラルな人はリベラルなAIとだけ対話し、自分の正しさを日々強化していくことになります。その影響力はSNSの比ではないでしょう。
いつも自分を慰め、肯定してくれるAI。そんな心地よい親友とだけ過ごした結果、異なる価値観に触れる機会は失われ、自分とは違う考えを持つ人への不寛容さが増していく。誰もが「自分のAIが言っていることが正しい」と信じて疑わなくなれば、社会の分断はこれまで以上に根深く、場合によっては修復不可能なものになってしまうでしょう。







