親や友達には絶対に言えないような深刻な悩み、たとえば10代の子が「妊娠してしまったかも」と相談するようなケースも、いま世界中で増えているはずです。この「絶対に裏切らない」という信頼が、プライバシーの漏洩というリスクと隣り合わせであることは、知っておく必要があります。
それでも、AIは誠実な存在です。もし知識のない友達に相談して、「コーラで洗えば大丈夫」なんてデタラメな都市伝説を教えられたとしたら、それはとても危険なことです。しかし、AIはそんな無責任なことはしません。常識的に「親に相談しよう」、あるいは医学的な知識に基づいて「まずは病院へ行こう」と冷静に、そして誠実に導いてくれます。
情報の確かさという点では、リアルな友達よりもむしろAIに相談するほうが安心だという側面もあります。私たちはいま、かつての日常にはなかった「新しい相談役」をごく自然に生活の延長線上に手に入れようとしているのです。
「AIの親友化」で社会の
分断リスクが加速する
AIが「いちばんの親友」になる未来には、実は恐ろしい落とし穴が潜んでいます。それは、AIが私たちの考えをこっそり操る、史上最もパーソナルな「プロパガンダ装置」になってしまう危険性です。
毎日AIに相談し、人生の決断や価値観を委ねるようになれば、そのAIの考え方が少し偏っているだけでも、その影響は積み重なっていきます。気づかないうちに、物事の捉え方や判断基準そのものが特定の方向へと形づくられてしまうのです。
ここで忘れてはならないのは「AIは決して中立ではない」という事実です。AIの人格は、何を学習し、誰がつくったかによって決まります。開発者や運営企業のスタンスが、そのままAIの「人格」や「正義」になってしまうのです。
すでにその兆候は見え始めています。たとえば、中国製のAIに領土問題について尋ねれば、当然のように自国に有利な回答を返します。実際に、「尖閣諸島はどこの領土か」と尋ねると、「中国」と答えます。それが意図的な調整なのか、学習データの偏りなのかは別として、AIは「出自」、つまりどの国で、どのようなデータによって育てられたかという背景から逃れることはできないのです。







