鳥獣対策専門員の
育成・配置は長期に渡るもの

 翻ってみると渡部さんは、酪農学園大学で狩猟鳥獣の生態と管理を学び、農協に勤めるかたわらで罠(わな)猟の経験を積んだ後に西興部村へ移住してきた。

 そして、持ち前のコミュニケーション能力を発揮しながら、猟区の仕事のかたわらで中原さんをはじめとする地元の猟師たちの教えを受け、狩猟の腕前を磨き、任期終了後は村役場に入った。村ぐるみで理想的な鳥獣対策専門員を育ててきたわけである。

「西興部村に来てから7年目ですが、皆様に大変お世話になって深く感謝しています。これからも知見を深め、事前の予防策や研修会を含めた鳥獣対策全般で、地域のために働いていけたらと思っています」と渡部さんは言う。

 それを実現するためにも正職員への転換が望ましいわけだが、「引き続き対策してほしいし、ベテラン猟師から技術承継した後は地元の若手猟師への技術継承役も期待しています」という菊池村長のコメントや、「ゆくゆくは3年度ごとに見直す西興部村鳥獣被害防止計画の立案にも携わってもらえたらと考えています」といった内田課長の話からは、長期的な視点に立って渡部さんを村役場の中で登用していこうとする姿勢が窺える。

 クマだけでなく鹿やイノシシなどを含めた鳥獣による被害が全国各地で拡大している。その対策の一端を担う専門員の育成や配置は、当然のことながら長期に渡る取り組みとなる。

一人前の猟師になるのに
かかる期間とは

 増えすぎた鳥獣による被害は、2年や3年で解決できる問題ではないからだ。それだけに「地域おこし協力隊で体裁だけ整えて、一時お茶を濁すようなことであってはならない」という厳しい声もあがる。

 鳥獣対策専門員は猟師でもあるわけだが、一人前の猟師になるには、師匠について10年、そこからさらに10年の経験が必要とされる。

 野生動物管理に関する知識を持った若手の人材を採用し、ベテラン猟師をはじめとする関係者を巻き込みながら地元ぐるみで育成していくことが、地元で息の長い活動をしてくれる鳥獣対策専門員づくりにつながるはず。

 地域おこし協力隊のスキームを活用するのなら、その任期を「試用期間」に位置付けて熱意や素質を見極め、任期終了後から専門員として採用する道を設けるのも一手だろう。西興部村におけるこれまでの取り組み、そして今後の歩みから学ぶことが数多くあるのではないだろうか。

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