スプレッドシートを使い、自分自身のスキルやリソースなどの要素を世界の必要性に照らして勘案した結果に基づき、自分が最も大きな影響を及ぼせる分野を七つほど決定した。そして進んでこう認める。自分は人の感情を読むのがうまくないので、会話には論理のパズルを解くように臨んでいると。そして世界を救いたいと思っているだけでなく、世界の救済は手の届くところにあると信じてもいる。
2016年の『ニューヨーカー』誌のプロフィールで、サムはこんなふうに評された。「彼の大きな弱点は、効率的でない人間への関心をまったく欠いていることだ」(注1)
それでもサムは、カリフォルニア州ストックトンには強い関心を寄せている。
月500ドルを無条件に支給する
ストックトンの実験的な試み
ストックトンはユニバーサル・ベーシック・インカム(UBI)の実験の場としてとくに有名な都市だ。政策案としてのUBIとは、受給者になんの資格も付帯条件も設けずに給付金を支給するものである。現金を最も必要とする人たちに与えることで、さらに複雑な再分配計画のじゃまになりかねないお役所手続きや利益団体の影響を最小化できる、とUBIは確約する。
サムが自ら貢献できそうな分野を絞り込んだスプレッドシートには、このUBIも残っていて、彼は国内6都市でその効果を研究する分析グループに資金を提供してきた。ストックトンに直接的に関わってはいないが、注視は怠っていない。〈ストックトン経済権限付与モデル〉は当初、やはりテック界の奇才でフェイスブック(現・メタ)の共同創設者クリス・ヒューズが支持していたものだ(注2)。
このプロジェクトでは、125世帯にひと月あたり500ドルが24カ月にわたって支給された。そして支給額とその効果にどういった因果関係があるかをつきとめようと、数多くの指標が収集されている。
(注1)Tad Friend, “Sam Altman’s Manifest Destiny,” New Yorker, October 3, 2016.
(注2)www.stocktondemonstration.orgで情報が見つかる。







