多くのビジネスパーソンが、「なんとなくモヤモヤする」「気持ちが落ち着かない」といった、言葉にしにくいストレスを抱えています。同じような環境で働いていても、そのストレスに振り回される人と、うまく整理して前向きに働ける人がいるのはなぜでしょうか。3万人以上を分析した作家・言語化コンサルタントの木暮太一氏に、ストレスとの向き合い方を伺いました。
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「漠然としたストレス」が心を弱らせる
多くのビジネスパーソンが「言葉にできない不安やストレス」を抱えています。
「なんだかモヤモヤする」「なんかおかしい気がするけれど、うまく言葉にできない」という嫌な感情を持っていますよね。
上司の一言が引っかかったり、同僚の反応が気になったり、業務の進め方やチームの空気にひっかかりを覚えたりします。「ここが悪い!」とはっきりした問題は指摘できませんが、なんとなく落ち着かない気持ちが残ります。この「言語化できないモヤモヤ」は、単なる気のせいではなく、現代のビジネスパーソンに広く共通するストレス要因です。
厚生労働省の「令和6年労働安全衛生調査(実態調査)」によると、現在の仕事や職業生活で「強い不安、悩み、ストレスを感じる事柄がある」と回答した労働者の割合は68.3%に達しています。
Job総研の2025年調査では、「現職場でストレスを感じている」人が76.2%、別の「モヤモヤ実態調査」では不安や悩みを「まぁまぁ~とても感じている」人が62.7%を占めていました。
じつに、3分の2のビジネスパーソンが何らかの職場ストレスやモヤモヤを抱えているわけです。
特に目立つのは「仕事の量」「仕事の失敗や責任」「対人関係」です。これらは「明確に悪い」と言い切れるものではなく、微妙な違和感や、積み重なる小さな不満として現れやすいため、なかなか言葉にできません。
「モヤモヤ」は言語化しにくい
人間関係や業務プロセスの中で生まれるモヤモヤは、しばしば「直感」や「違和感」という言葉で認識されます。多くの人が「なんか合わない」「この進め方って本当に効率的なのだろうか」と感じています。それでも「大げさかもしれない」「根拠がない」「うまく説明できない」と考えて、自分の感覚に蓋をしてしまってるのが現状ですね。
言語化できないモヤモヤを抱えたままにすると、徐々に生産性やメンタルヘルスへ悪影響が及びます。
◯集中力が低下する:頭の中で考えがぐるぐると回り、業務効率が落ちます。
◯人間関係が悪化する:違和感を伝えられないために、誤解や不信が積もっていきます。
◯燃え尽きや離職のリスクが高まる:Job総研の調査でも、ストレスを感じる人の多くが「はたらき方の変化」や「人間関係の希薄さ」を指摘しています。その結果としてモチベーションが下がり、活気を失う人が増えてしまいます。
◯身体症状が出る:不眠やイライラ、頭痛など、心身の不調として現れるケースも少なくありません。
実際、厚労省調査では、メンタルヘルス不調により連続1か月以上休業した労働者が一定数いて、事業所レベルでも約1割に影響が出ています。小さなモヤモヤが積み重なると、やがて大きな問題へ発展してしまいます。
言語化メソッドが提唱する「モヤモヤ解消」の第一歩
では、どうすればいいのでしょうか。最も手軽で効果が期待できるのは、感情を「言葉にする」ことです。
心理学や脳科学の分野で注目されている「エモーショナル・ラベリング」は、感情にラベル(名前)をつけるだけで扁桃体の活動が抑えられ、ストレス反応が軽くなるという考え方です。
具体的な方法はとてもシンプルです。
「今、この指示に違和感を覚えている」
「このタスクの進め方でモヤモヤしている」
「上司のあの言い方にイライラしている」
こうした言葉をノートに書いたり、心の中でつぶやいたり、信頼できる人に話したりするだけでも効果があります。
大切なのは「完璧な言葉」を探さないことです。というか、「全然言葉にできていない」というレベルでもいいんです。最初は「モヤモヤしている」「なんか変だ」くらいの粗いラベルでも十分に役立ちます。言葉にすることで、感情が「情報」として整理され、対処しやすくなります。
さらに進めたいなら、次の習慣を試してみてください。
1. 1日5分の振り返りタイムをとる
1日の終わりに「今日のモヤモヤ」を3つ挙げてみます。
2. 「本当はどうしてほしかった?」を3回繰り返す
ここが大事です。「なぜ自分はモヤモヤしたんだろう?」という問いかけでは何も出てきません。そもそも言葉にできない事柄なので、「なぜ?」を繰り返しても全然出てこないのです。
そこでこの問いかけです。モヤモヤを抱くときは、出来事や相手の言動が自分の想定とズレています。「本当はどうしてほしかったか?」を言葉にすることで、どこに違和感を覚えているか自分で理解することができます。
3. 友達視点で書く
これも重要です。自分のことを書こうとするとうまく言葉にできないことがあります。そんなときは自分を「友達のAさん」として、客観的に記述してみます。自分のことは見えづらかったり、うまく言葉にできにくかったりします。しかし友達に起きている出来事であれば、苦労なく言葉にできることがよくあります。当事者を「友達」に入れ替えて「Aさんは、本当は何をしてほしかったんだろうか?」と考えて書いてみましょう。
個人と組織が今すぐできること
個人レベルでは、まず「言語化する習慣」を身につけてください。完璧を求めず、「感じたこと」をそのまま言葉にする練習を続けるといいです。AIツールを「壁打ち相手」として活用するのも有効です。モヤモヤを入力して「整理して」と促すと、意外な気づきが得られることがあります。
組織・マネジメントレベルでは、次のような取り組みが効果を発揮します。
◯定期的な1on1で「最近のモヤモヤや違和感」を聞く時間を設ける。
◯心理的安全性を高めるトレーニングを実施する。
◯ストレスチェックの結果を「集団分析」し、チーム全体の傾向を把握して改善につなげる。
◯「失敗や違和感を共有しやすい」風土をつくる(例:失敗共有会、匿名アンケート)。
厚労省調査でも、メンタルヘルス対策に取り組む事業所は63.2%と増えています。ただし中小企業では、まだ取り組みが遅れているのが実情です。規模に関わらず、「モヤモヤを言語化しやすい環境」をつくることが、生産性の向上と離職の防止につながると考えられます。
モヤモヤは「弱さ」ではなく「サイン」だと考える
職場で感じるモヤモヤは、決して悪いものばかりではありません。また、あなたが弱いからモヤモヤしているわけでもありません。
モヤモヤは「このままではいけない」というあなたの内なる声であり、改善のきっかけにもなり得ます。問題なのは、それを言語化しないまま溜め込んでしまうことです。7割近くの人が感じているこの感覚を、個人と組織が一緒に「言葉にしていく」ことで、働きやすい職場へ確実に近づけます。
今日から、まずは「今、どんなモヤモヤを感じているか」を、一言でいいので紙に書いてみてください。その小さな一歩が、あなたの職場と気持ちを少しずつ軽くしてくれるはずです。
(本稿は、木暮太一著『仕事ができる人の頭のなか』に関連した書き下ろし記事です)







