
先々月末(2026年5月末)、“高業績人材に共通する「4つの経験学習力」”というタイトルのセミナー*に、経験学習理論の第一人者であり、多数の著書がある松尾睦教授(青山学院大学経営学部/北海道大学 名誉教授)が登壇し、ビジネスパーソンの耳目を集めた。また、企業入社内定者向けのツール「フレッシャーズ・コース」には、「経験学習」の方法をマンガで説くコーナーがある。その「フレッシャーズ・コース2027*」にも出演されている松尾睦教授を「HRオンライン」がインタビュー。経験学習の方法と価値、組織における人材育成方法などの話を聞いた。(ダイヤモンド社 人材開発編集部、撮影/菅沢健治)
*新商品ローンチ記念セミナー(2026年5月実施) 高業績人材に共通する「4つの経験学習力」
*内定者フォローツール 「フレッシャーズ・コース2027」
学びの7割は直接の仕事経験から得られる
この春に入社した新社会人たちが組織で働き始めて3ヵ月ほどが経った。新入社員たちは、これから、それぞれの配属先でさまざまな知識やスキルを獲得して、成長していくのだろう。
ビジネスパーソンの成長に欠かせないものが「経験」だ。しかし、ただ、やみくもに経験を増やすだけでは成長は得られない。経験から「学ぶこと」が重要なのだ。そのための手段として、経験したことを振り返り、学びながら活かすという「経験学習」がある。
「経験学習」をどのように行えば、組織内の人材は育っていくのか? 『職場が生きる 人が育つ「経験学習」入門』『部下の強みを引き出す 経験学習リーダーシップ』(ともにダイヤモンド社)など、経験学習についての著書がある松尾睦教授(青山学院大学経営学部)は、まず、次のように語る。
松尾 アメリカの有名なリーダーシップ研究では、社会人における学びの7割は直接の仕事経験から、2割は上司や先輩など他者の観察・アドバイスから、1割は読書や研修から得ているという「70:20:10」の法則が導き出されています。成長するために、経験が重要なことは明らかですが、同じ経験をしていてもそこから学び取れる人と学び取れない人がいます。それは、なぜか? 「経験から学ぶ力」の違いです。
経験学習には、(1)「経験」する→(2)「内省」する(振り返る)→(3)「教訓」を引き出す→(4)「応用」する、というサイクルがあります。これは、デイビッド・コルブという研究者が提唱するモデルで、ある経験をし、その経験の内容を振り返り、そこから何らかの教訓を引き出し、その教訓を別の状況に適用するというものです。この4つのステップを回していくことで、誰もが経験から学んでいくことができるとされています。

松尾睦 Makoto MATSUO
青山学院大学 経営学部教授
北海道大学 名誉教授
1964年、東京生まれ。英国ランカスター大学博士課程修了Ph.D(Management Learning)。塩野義製薬、東急総合研究所、岡山商科大学商学部助教授、小樽商科大学大学院商学研究科教授、神戸大学大学院経営学研究科教授、北海道大学大学院経済学研究院教授などを経て、2023年より現職。主な著書に『経験からの学習』(同文舘出版)、『職場が生きる 人が育つ「経験学習」入門』(ダイヤモンド社)、『成長する管理職』(東洋経済新報社)など。
経験学習のサイクルをうまく回していくために必要なもの――それが、「経験から学ぶ力」だ。具体的にはどのようなものか?
松尾教授は、「ストレッチ」「リフレクション」「エンジョイメント」の3つを挙げる。
松尾 「ストレッチ」とは、「挑戦する」ことです。仕事を任せられたときに、上司から怒られない程度で済ませようとするか、さらに一歩先まで頑張ってみようと思うかで、その後の成長に大きな差が出ます。自分の現在の能力よりも少し高い目標に向かってチャレンジすることで、新しい知識やスキルを身につけることができます。
挑戦を続けていると、壁にぶつかることもあるでしょう。そこで、自分の行為を振り返るという「リフレクション」が必要となります。いままでのやり方が通用しなかったときにどうしたらいいのかを内省したり、理不尽なことがあったときも相手のせいにするのではなく、自分の行動や状況を俯瞰することが大切です。成功や失敗の原因を振り返ることで教訓を得ることができ、別の場面でも応用することが可能になります。
振り返りをして、腹落ちしたり、新しい気づきがあったら、仕事のやりがいや楽しさを感じるはずです。これが「エンジョイメント」です。仕事にやりがいを感じたら、もっと新しいことや高い目標へと挑戦したくなり、それが次のストレッチにつながります。このように、「ストレッチ」「リフレクション」「エンジョイメント」という3つの力は相互に影響しながら循環していくのが理想です。








