新入社員を成長させる、日本光電の“エルダー制度”と“経験学習”の仕組み

医療機器の開発・製造・販売を行う日本光電工業株式会社は、1951年の創業以来、「エレクトロニクスで病魔に挑戦」をモットーに、さまざまな医療機器を世界各地の医療現場に提供している。人に寄り添った“モノづくり”を行う同社は、従業員一人ひとりの力を最大限に引き出すことを念頭に、「人材」を「人財」とし、その育成に力を注いでいる。新人1人に対し、1名の育成指導担当者がつく「エルダー制度」はどのようなものか? 人財育成の根幹をなす経験学習のサイクルをどう回しているのか? 同社グローバル経営管理本部フェニックス・アカデミー副所長の茂木順子さんと人財開発本部フェニックス・アカデミー研修チームリーダーの髙木綾香さんに話を聞いた。(聞き手/永田正樹、構成・文/狩野 南、撮影/菅沢健治)

経営理念を実現させていく、社員一人ひとりの力

永田 最初に、御社の人財育成の全体像について教えてください。

茂木 では、弊社の経営理念からお話しさせていただきます。弊社は、「病魔の克服と健康増進に先端技術で挑戦することにより 世界に貢献すると共に社員の豊かな生活を創造する」という経営理念を掲げています。そして、その理念のもと、「グローバルな医療課題の解決で、人と医療のより良い未来を創造する」という2030年を見据えた長期ビジョンを計画し、その長期ビジョンの実現に向けて、三段階の中期経営計画を設けています。これらの経営理念、長期ビジョン、中期経営計画のベースにあるのが、「7つのグローバル共通価値基準」です。「経営理念、長期ビジョン、中期経営計画の推進に必要な、世界中の社員をつなぐ共通の価値観」と定義しておりますが、簡単に言えば、弊社の社員、グループ企業や海外勤務の社員も含め、すべての社員が同じ価値観のもとに、理念に向かっていくための拠りどころのようなものです。

 中期経営計画は、現在、フェーズ2に入っており、「医療への貢献にやりがいと誇りを持てる組織風土の醸成」をテーマに、人財育成と組織風土の改革を実施しています。理念の実現には、やはり、社員一人ひとりの力、人財が欠かせません。具体的には、「グローバル共通価値基準」をベースとして、「人員生産性の向上」「BEACON人事制度」「ダイバーシティ&インクルージョンの推進」「DX人財の育成」「キャリア支援の充実」の5本柱で、人財育成を進めているところです。

永田 茂木さんと髙木さんのお二人が所属しているフェニックス・アカデミーは、まさに、その理念やビジョンを体現できる人財を育成する部署ですね。どのような面に注力して、人財の育成を行(おこな)っているのでしょうか?

茂木 行動や成果は目に見えやすいものですが、そこに至るまでには、その人の持っている“見えにくい”スキルが重要と考えています。そのなかでも、「対人」「対課題」「対自己」の3つをコアスキルと呼び、どのような業種や職種にも求められる汎用性の高いスキルとして、その向上に注力しています。ほかに、DXや語学などの「ベーシックスキル」、意識・態度として「グローバル共通価値基準」をベースに持つことも重視しています。

 また、弊社では、長期ビジョンを実現するために、「一人ひとりが『力を発揮』し、チームとして『価値を創造し』、日本光電全体として『One Team』の組織になっていきたい。」という“ありたい組織像”も掲げています。ありたい組織を目指すために、人事制度では、「『グローバル共通価値基準』に根ざす」「『役割』に向き合う」「『能力と可能性』を活かす」という3つを基盤にしているのですが、これらを育成面からサポートすることも行(おこな)っています。社内全体で共有する「グローバル共通価値基準」の浸透に向けて、「役割等級別プログラム」「職種別プログラム」など、複数の教育プログラムを用意し、各部門の方々と協力しながら進めています。