旅行や出張のたび、さてお土産はどうしようか、小分けで数があって土地勘があって…と頭を悩ませる人は多いかもしれません。全国津々浦々を旅し、今年卒寿を迎えた下重暁子さんは、お土産は自分のために買う、といいます。著書『もう一度こんな日本を旅したい』(青春出版社)から、下重さんがもう一度行ってみたい好きな場所のひとつ、奄美大島の紬(つむぎ)にまつわるお話を紹介します。
「旅は身軽にかぎる」を返上
旅は身軽にかぎる。一泊や二泊の旅なら、ショルダーバッグ一つ肩にして出かける。外国旅行でも機内に持ち込める手荷物だけということも多い。預けたトランクを受け取るまでの時間が惜しい。
旅先で土産など買うことはまずない。土産を買うなんてどういう神経か愚の骨頂ぐらいに思っていた作家・下重暁子さん Photo:JIJI
それにしては、裾の長い洋服や着がえなど、人よりたくさん入っていたりして、連れが驚くことがよくある。自慢じゃないが荷造りが巧いのである。小さい頃から父の転勤について歩き、そのつど、箱に詰めたり出したり、何回か重ねるうちに身についたらしい。小さな隙間にきちんと収めるコツなど、日頃ズボラな私を知る人はたいてい驚く。私自身も人が諦めているものを上手に詰め直して「ホラ入るじゃない?」なんて言っているのが好きだ。
荷物の少ないのにはもう一つわけがある。なにしろ四十キロ前後の体重なので重いものを持つとふらつくのも、見栄坊のせいである。いつも軽々とさっそうとしていたいなんて思うものだから、国内旅行はショルダーにせいぜい持って紙袋である。旅から帰ったとひと目でわかるのがいやで街であたかも買物をしてきたかのごとく、汽車を降りたらそのまま都会の雑踏にまぎれこみたい。従って旅先で土産など買うことはまずない。土産を買うなんてどういう神経か愚の骨頂ぐらいに思っていた。







