「開発4年」の常識を捨てよ
生き残りを賭けた絶対条件
最大の対策は下位市場から逃げないことです。幸い、トヨタはマルチパスウェイ戦略なので、欧米で高級SUVにEV戦略をシフトしたとしても、中国市場で中国車に対抗するEVを開発することは戦略上矛盾しません。
ただ、その場合、日本車メーカーにしみついた考え方をアンラーニングする必要があります。具体的には開発期間に関する考え方です。
日本車は新車の開発に4年をかけます。これはガソリン車の開発には必須の条件です。ガソリン車では重くて暴れまくる新型エンジンの振動をうまく吸収して安定した走りを実現するために、時間をかけ、すりあわせ技術を駆使して、バランス調整を行います。
中国のEVメーカーの平均的な新車開発期間は1.5~2年です。日本人からみれば乱暴な話ですが、EVを大画面テレビやスマートフォンと同じ電気製品だと捉えて、基本となるプラットフォームのうえに部品モジュールをつみあげて設計します。
最近はAIによるシミュレーションの性能が向上していますから、実車を試作する以前に、車のかかえる問題点はコンピューター上のデジタルツインでチェックできるため、設計→試験→改良のプロセスは素早く何度も回せます。
今回、2027年半ばに発売する予定のLF-ZCの開発を中止したわけですが、中国企業のスピードなら代わりに開発を始める後継車を2028年1月に発売してきます。
ポイントはこれを「無理だ」と思うか「挑戦しよう」と思うかの違いです。ここがイノベーションのジレンマの呪いから脱出できるかどうかのポイントです。
トヨタの場合での具体例を挙げます。
LF-ZCの開発を中止する一方で、「LF-ZC(改)」を中国市場向けのEVセダンの位置づけで開発するとします。アルミボディを安価な鋼板に替え、次世代電池を既存技術の電池に置き換え、内装をヤリス並に簡素化させます。
それを中国市場でテスラのモデル3の競合車種となる価格で、2028年1月に投入する。OSのアリーンを前提にネットワーク経由でソフトウェアをアップデートすることで性能は後から向上させていく、そういったスピード感の開発を中国企業は当然のように行います。
とはいえ、いまのところ先進国の自動車メーカーの中でこのようなイノベーションのジレンマ対策に力を入れられているのは韓国勢だけのように見受けます。
冒頭申し上げたようにLF-ZCの開発中止は経営として妥当な判断だったのだと思います。ポイントはトヨタがこれからの2年間、世界のEVの下位市場でどう戦うか。それ次第でイノベーションのジレンマの未来から逃れられるかどうかが決まるのです。








