静かな解雇といっても、解雇通知を突きつけるわけではありません。実態としては、仕事の任せ方や評価、配置を通じて、その社員を組織の中心から少しずつ外していきます。
重要な仕事や責任のあるプロジェクトを任せず、成長につながる機会も、「ストレッチした」目標も与えません。
割り当てるのは最低限の業務だけで、評価も上がらないため、昇給や昇進の対象からも外れます。会社に在籍してはいても、組織の意思決定や中枢の業務からは完全に外れる状態を作り出すのです。
本来、マネジメントとは組織を活性化させ、社員の力を引き出すためのもの。静かな解雇では、逆に力を出させない方向へマネジメントのコストを割くのです。
日本は企業に対する解雇規制が厳しいため、企業は面と向かって辞めてくださいと言う代わりに評価や配置を通じて中心から外そうとします。私はこれを「遠心力をかける」と表現しています。
あるいは周囲への影響が小さいポジションに移す。「切れない」ならば、「働かせない」というわけです。
ただ、ひとつ注意していただきたいのは、静かな解雇の対象になるのは、単に残業をしない社員や、ワークライフバランスを重視する社員ではないということです。
残業はしなくても、時間内に成果をきちんと出している。仕事の優先順位を整理し、生産性高く働いている。キャリア志向は強くないものの、任された役割は十分に果たしている。こうした社員にはまったく問題はなく、むしろ会社が守るべき人たちです。
対象になるのは、指示された最低限のことしかせず、向上心も改善意欲も見られない社員です。もっとできるはずだと期待をかけても、大幅にそれを下回る。フィードバックをしても変わらず、結果としてその穴を周囲が埋め続けている。
静かな退職者という言葉を、こうした人以外にまで安易に広げてしまわないことが重要です。
「静かな退職者」がもたらす
同僚への深刻な影響
静かな退職者が問題なのは、その人が成果を出さないことよりも、その穴埋めを周囲が背負わされることにあります。
現場では、上司が何度も声をかけ、同僚が仕事を「巻き取り」、ミスが起きないように周りが確認をします。顧客対応やクレームの処理を別の社員が肩代わりすることもあります。
とりわけ、まじめで優秀な若手リーダーほど献身的に対処します。私自身、問題社員に対応し続けた若手が疲弊しきってしまう場面を何度も見てきました。皮肉なことに、変わらない一人を支えようとした人が、先に潰れてしまうのです。
だからこそ私は、静かな解雇を単なる報復とは考えていません。







