社長に就任したばかりだった中村さんは、上場以来初の赤字に転落という経営危機に、「経営理念以外に聖域なし」というスローガンを掲げました。悲壮感はあっても、悲観につぶされない姿勢を見せるための決意の宣言として、当時の松下電器の全社員にはわかりやすく、心に刺さる、説得力のある言葉だったと思います。

 経営理念以外に各事業部での「聖域」が確かにあり、それを放置する空気が社内に充満していることを中村さん自身が嗅ぎ取っていたからでしょう。それは、大企業病というものを患う企業が経験することでもあったといえます。

会計も内部統制も企業防衛も
CFOが背負う時代になった

 やがて、グローバル経済が復活していく中で、米国では住宅バブル崩壊から2008年にはリーマンショックが起きるなど、国内外の経済は激変の時代が続くことになります。

 特に2014年あたりから、ドル/円の為替については、また新たな局面を迎えていることは、金融の専門家も指摘するところでもあり、過去の経営面での施策が数年後には通用しないという時代になっていると痛感します。

 大きな成功も得やすい時代であると同時に、崩壊も早い。経営を持続的に維持することが難しい時代だといえます。

 パナソニックグループのITバブル崩壊以後の売上高の推移を見ると、日本経済の停滞とほぼ同調している感もあります。このマクロ・ショックは、日本にとっても、戦後の松下電器にとっても、最大の影響を及ぼす経済要因であったと見ることもできます。

 そう考えると、経理・財務の責任者が背負う経営戦略上の責任はますます重いものになっていくように思われます。

 私がCFOをつとめた2000年代前半でさえ、減損会計、税効果会計など新たな会計基準の導入や、内部統制(当時は米企業改革法=SOX法)への対応や、企業防衛策などまで、会社全体で取り組むべき課題が様々にありました。