会社員人生を左右することになる左遷。人はどうその挫折を乗り越えるのか。1995年にソニー社長に就任、2000年~05年は会長兼グループCEOを努めた出井伸之氏は、ソニーで2度の左遷を経験した後、同社初となるサラリーマン社長となった。いったいなぜ左遷され、どのように乗り越えて、社長に上り詰めたのか。
※『人生の経営』(出井伸之著・小学館新書)から、一部を抜粋し編集
社長・大賀さんと言い合いに
45歳で「追い出し部屋」に左遷
会社に勤めていると、ときに挫折や失敗をすることがあります。なかでも、左遷や不本意な異動、希望の役職に就けなかったことで腐ってしまう人は多いと思います。
それはすごくもったいないことです。かく言う僕はソニー時代、2回も左遷を経験しています。とくに2回目の左遷は、コンピュータ事業部長をやった後で、もう45~46歳になっていました。このときは肩書きもすべて取られてしまい、机を一つ与えられただけだった。3カ月くらいでしょうか。まったく仕事も与えられず、まるで追い出し部屋みたいな感じだった。3カ月間、まったく仕事がないというのは長いですよ。こんな僕でも本当に辛かった。
この左遷を指示したのは、(当時のソニー社長の)大賀典雄さんでした。大賀さんとはずっと因縁があるんです。この左遷を指示したのが大賀さん、僕を社長に指名したのも大賀さんなんです。「僕と大賀さんとは前世からの因縁があるんだ」と周囲には笑いながら話していた時期もありました。
だけど、大賀さんとは直属の上司・部下で働いたこともないし、意見は合わないどころか、いつも、いい意味での論争、平たくいうと“言い合い”ばかりしていました。また、僕の提案などはおそらく、一度も取り上げてもらったことはないと思います。