辞表を手にして社長室へ
雪解けを生んだ元上司のひと言

 精神的に追い詰められた私は、ある日、意を決し、辞表を持ち、社長室へ行ったこともありました。私自身の心の中でも、中村さんに対する感情的なわだかまりが大きくなり、上場以来の赤字が確実という中で、自分なりに責任をとろうと考えたのです。

 しかし幸いにも、その後の業績のV字回復とともに、冷え込んだ人間関係も雪解けすることになりました。ただ、その雪解けのきっかけをくれたのは、元上司の鈴木一さんでした。

 2002年初めだったか、役員OBらが集まる食事会が開かれました。鈴木さんと中村さん、そして私が同じテーブルになり、鈴木さんは「中村さんは改革をよくやってくれている。いずれ中興の祖と呼ばれるで」と話しかけられました。

 回復基調とはいえ、一時は経営難に陥らせたのですから、当時の経営陣を褒めるOBは1人もいないような状況で中村さんも嬉しかったようです。翌日、部屋に呼ばれ、「社長になって初めて、役員OBに褒められた、感激した」と素直に喜んでいました。

 鈴木さんは、2006年の暮れに他界されました。感謝に堪えない、という言葉とともに人生の切なさを実感しました。