涙の母娘の再会になるかと思ったら――
直美は寛太(藤原季節)に、文に関するさらなる調査を依頼する。
秘密の話の場所は、チュウ(若林時英)の経営する田乃上屋。
いつの間にか、チュウは、麺包パンなる蒸しパンを売っている。隣に御菓子司の看板があるので、団子屋を拡張して新たに売りだしたのだろうか。店の前でコック帽をかぶって店頭販売している。
店内はテーブルと椅子で洋風。チュウはやりたいことを見つけて頑張っている。
寛太にいまある情報を包み隠さず話した直美は「お願いします」と頭を下げる。
直美の表情が髪で隠れ、視聴者は寛太の表情に集中することになる。
寛太は、なんで俺がと思いながらも仕方ないなあと気持ちを動かしていくのがよくわかる。
顔のアップばかりを使用しなくても、見せたい狙いが伝わるうまい演出だ。
直美は文の家を訪ねる。この回も、先週に引き続き、近所のふたりがいい芝居をしている。年かさの女性が井戸から水をくむとき、もうひとりに助けられ「いつもありがとう」と言う(字幕では「ああ悪いね」)。ふたりは母子なのか、それとも近所同士なのかわからないが、助け合っているのがわかる。
文の手料理を食べる直美。
はじめての母の手料理である。
お互い、たぶん、母子だとわかっているが、隠して、穏やかに食事する。
「あの――私の母親ですか」
思い切って切り出す直美。
文は黙る。喉仏がかすかに動き、動揺を感じさせる。
「そんなふうに見えます、私? 名前も付けずに。赤ん坊を捨てるような女に見えるってことですよね。そんなひどいことを」
内田慈がうまいのは、顔のパーツだけ動かすのではなく、顔の角度を自ら変えることで、表情を多様に見せることだ。カメラがフィックス(固定)されていても単調に見えない。
詐欺を働くくらい賢い文だから、直美がこれ以上追及しないように、ガツンと突き放したのだろう。
何も言えない直美。黙って“母”の作った汁物を食べる。お椀で悲しい顔が隠れるが、隠れていることでいっそうやりきれなさが伝わってきた。このへん、昔ながらの歌舞伎などにある、本心を見せない者同士の人情噺――名乗り合えない悲劇の雰囲気だ。日本に生まれてよかったなと思う、定番の芝居のパターンである。
夜、帰宅して、環の寝顔を眺めた直美は、起き上がり、お守りを持って「おっかさん」とつぶやく。
ほんとは、文に言いたかった言葉であろう。
以前、吉江(原田泰造)に「おとっつぁん」と呼んでもいいと言われたとき、呼ばなかったのは、「おっかさん」と呼ぶことを夢見て大事にしていたからなのだとわかったような気がした。
とてもしっとりした良い回だった。









