「それでも日本人の消費者が中国車を“価値があるから”という理由で買うかな?」と疑問に感じる読者の方も多いのではないでしょうか。

 初期のユーザーはおそらくそこではありません。

 日本国内には中国籍の在留外国人だけで93万人の方が暮しています。帰化して日本人になった方や台湾籍の方など広義の在日華人は総人口の1%を超えるともいわれます。

 実は日本国内ではBYDの乗用車はこれまでもコンスタントに売れているのですが、購入しているのは必ずしも日本人の消費者だけではありません。その前提でコミュニティの中に一台、二台とBYDのラッコを乗りこなす“同僚”や“ママ友”が増え始めるところから日本市場への浸透が始まるでしょう。

「子どもを抱えながらだとこのハンズフリーの電動スライドドアが本当に便利なの」
「確かにそうねぇ」

 このような会話から、消費者層が拡大していく可能性は十分にありそうです。

【検証3】
彼らの戦略ゴールはどこにあるのか?

 さて、とはいえこの価値戦略での黒船襲来を前提に考えると、最初の1~2年で年間の販売台数がサクラ並の1万台に届けば、ラッコの業績としては御の字ではないでしょうか。

 そこで改めて考えてみたいのですが、BYDが狙う戦略ゴールはそのようなレベルなのでしょうか?

 私はもっと怖いゴールを彼らが設定している可能性を想定しています。

 ラッコが仮に日本市場で初年度で1万台を達成するとしたら、それは日本の流通市場が高い興味を示すことになります。BYDが軽自動車のチャネルとして欲しい事業者が、向こうからBYDにアプローチしてくるでしょう。

 実は昨年10月にイオンがBYDを販売提携するという報道が話題になったことがあるのですが、後にイオン、BYD双方から「イオンモールにBYDの販売店舗を常設する計画はありません」と報道内容が否定されたことがあります。

 しかし軽EVが売れるとなると話は変わる可能性があります。

 仮にそれがイオンだけでなくドン・キホーテだったりヤマダ・エディオンだったりエネオスだったりするわけです。そういった「車業界から見れば異業種流通がラッコの売り手として本気で手を挙げるようになる」これが日産やホンダから見た小さめのほうの「怖いゴール」です。

 では大きめのほうの「怖いゴール」は何でしょうか?