もしイオンではなくスズキやダイハツが手を挙げたら何が起きるでしょうか?

 BYDのラッコがもし日本市場で一定の成功を収めたとしたら、それはBYDが3つのことを証明したことになります。

 BYDには1年半で日本市場で成功する車を開発するスピードがあること。開発した車は先進国で売れる品質であること。そしてそれがEVやSDV(ソフトウェアをアップデートすることで性能が上がる車)という日本メーカーがどちらかというと投資が遅れている領域の技術であることです。

 スズキはインド市場ではインドの国営企業マルチ・ウドヨクと合弁してマルチ・スズキとして勢力を伸ばしてきました。ここを足場にグローバルサウス市場を狙うというのがスズキの基本戦略です。

 しかし仮にBYDスズキが成立すれば、マルチ・スズキは、すでに展開しているガソリン車、ハイブリッド車、CNG車、BEVというマルチパスウェイ戦略に、BYDの電動化技術や商品開発力を取り込むことができる。これにより、グローバルサウス市場における電動車の選択肢を、より速く、より幅広く拡充できる可能性があります。

 もしそういった動きを阻止しようと今度は日産やホンダが手を挙げたらどうでしょうか?

 日産の経営危機のときに台湾の鴻海が日産を買うのではないかと噂されたことがあります。日本の経済安全保障上、そういった買収は成立しづらいものです。しかし日産の販売チャネルで全面的にBYD商品を扱うことで売り上げを確保するといった戦略提携なら、政府も日産の生き残り策として賛成するかもしれません。

 そもそも日産にしてもホンダにしても、単独でEV開発に投資する余力はありません。次世代の軽EV含めて、この先不足する新車のラインナップという視点では、BYDと本格的な資本提携を結ぶのは生き残り戦略としては「ナシ」とはいえないでしょう。

 こういったシナリオの怖いところは、BYDに選ばれるのはどこか1社だということです。

 そういった疑心暗鬼が自動車会社同士にあることで「絶対にそんなことがあるはずない」と日本人が思っているような展開が起きうるかもしれません。

 そしてそういった「日本の有力自動車メーカーをパートナーとして獲得する」というゴールこそが、軽EVという黒船来襲の真の狙いだとしたら?そうだとすると自動車業界はあまり軽んじて7月28日を傍観していてはいけないのかもしれないのです。

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