迷走を繰り返した
維新の前原共同代表

 急転直下の合意だが、もともと維新の主張は必ずしも一枚岩ではなかった。大阪府庁内に事務局を置く「北陸新幹線早期全線開業実現大阪協議会」は小浜・京都ルートを推進してきた経緯があり、前掲の吉村氏の要望書にしても、ルート再考より「合意形成」と「一日も早い認可・着工」が趣旨である。

 吉村氏は2025年6月に、小浜・京都ルートによる早期全線開業を訴えてきた大阪府知事としての立場に現在も変わりはないとしつつ、「他のルートを全く検討せずに進めていく状況ではもうない。京都府民の判断を受けて行政としても考える可能性がある」とも述べている(2025年6月21日朝日新聞)。

 発言だけ追うならば、もっとも迷走したのは維新の前原誠司共同代表(整備委員会共同委員長)だろう。前原氏は2024年総選挙(京都2区)の公約に「北陸新幹線の大阪延伸ルートについては、工期・事業費の増大や環境への懸念も懸念される『小浜・京都ルート』を撤回し、現実的かつ合理的な『米原ルート』への変更を実現します(選挙公報)」としていた。

 ところが、新実氏のトップ当選から2カ月後の2025年9月になると、東海道新幹線との直通を前提とする米原ルートはJR東海の理解を得られないとして「第3の案をまとめ、提示する取り組みに移りたい」と発言した(2025年9月29日共同通信)。

 前原氏は2026年2月の衆院選公約には、「巨額の費用と工期の長期化、環境への影響が懸念される『小浜・京都ルート』を抜本的に見直し、与党PT共同座長として費用対効果や工期、環境影響を徹底的に比較検討し、国民負担を最小限に抑え、早期開通を可能にする現実的な案を示します(選挙公報)」と記載。「小浜・京都ルートを撤回」が「小浜・京都ルートを抜本的に見直し」に変わり、「現実的かつ合理的な米原ルートへの変更」は削除された。

 変遷をたどると、自民党が小浜・京都ルート南北案(第1の選択肢)、維新が米原ルート(第2の選択肢)を譲り、「第3の選択肢」である桂川案に決着する流れは、既に決まり切っていたようにも見えてくる。

 吉村氏はしばしば「大阪まで1日も早く北陸新幹線をつなげることが維新としての方向性だ」と発言しており、2025年12月に与党PTが再検証に着手した際も「大阪まで一日も早い全線開業を実現するため、完璧じゃなくてもみんなが納得できる案を比較検討し、早急に判断していくことが近道」と述べている。

 維新の最優先事項はルートの選択ではなく、早期の全線開業であった。米原ルートが持ち出されてきたのも、財源やB/Cなど着工条件をクリアしやすく、工期が短いことが理由だった。

 しかし、米原ルートは総工費が少ないが、新幹線を誘致したい福井県、したくない滋賀県の反発、JR西日本・JR東海の否定的態度などハードルも多く、各方面との合意形成をやり直さなければならない。早期の全線開業が目的である以上、工期に明確な差がないならリスクの高い選択だ。

 小浜・京都ルートは環境アセスメントに着手しており、合意形成も(比較的)進んでいるが、肝心の京都の見通しが立たない。整備委員会が南北案を「京都市民の懸念を払拭し、京都府市の同意を得て着工5条件を充足できる蓋然性にとりわけ乏しい」として除外した以上、「最短経路」は自然と桂川案に絞られる。